領事情報

   

在留邦人の皆様へ

  平成23年3月24日
在ロシア日本国大使館領事部

 

お知らせ(第11回「海外邦人安全対策連絡協議会」開催報告について)

 

3月24日(木)12時から13時30分まで、当館にて第11回「海外邦人安全対策連絡協議会」を開催しましたので結果をご報告します。

 

● 出席者 14名参加
日比ジャパンクラブ領事・総務部会長、金子ジャパンクラブ教育部会長、池田ジャパンクラブ事務局長、替山日本航空インターナショナル・モスクワ支店長、ツムラーレ総括支配人代理(森田カスタマーサービス担当)、服部JETROモスクワセンター長、種村モスクワ日本センター所長、加藤モスクワ日本人学校長、福島総括公使(邦人安全対策統括官)、古市参事官(医務官)、服部参事官(領事部長)、堂口書記官(警備班長)、中村書記官(領事部担当官)、石村書記官(領事部副担当官)

 

● 議題及び協議内容

 

1.冒頭(当館より)
3月11日東北地方で発生した大規模な地震と津波により残念ながら多数の日本人の方が被害に遭われた。ご存じの方も多いと思うが、日本大使館前には、ロシアの方々からたくさんのメッセージやお花が供えられ、現在においても支援の輪が広がっている。ロシア政府からもラブロフ外相やメドベージェフ大統領夫人が大使館を訪れ、記帳され、真摯なメッセージを日本や被災者に対して表明しており、ロシア人の温かさを実感している。
邦人安全対策の観点では、日ロ関係が悪化し、3月初旬には、日本大使館に対して一部の若者と思われるロシア人が投卵、国旗を燃やすなどの事件が発生し、自分も大使館に駆けつけて対応したが、相対的にロシア人の日本に対する感情が悪化し、大使館でも自己防衛のために身構えて警備などの体制を強化していた。他方で、先述の震災支援などを通じて最近の日ロ関係は、緊張が緩和傾向にあるが、今後政治的な関係改善があるのかどうか、予断を許さない状況。政治的な緊張と関係した事件以外にも、ロシア国内情勢に起因するテロ、一般犯罪、医療問題など今回安全対策連絡協議会を通じて情報シェアや意見交換をお願いしたい。

 

2.テロ及び犯罪情報等(当館より)
(1)テロ情勢
最近のテロ情勢としては、‘09年11月のモスクワ発サンクトペテルブルク行き「ネフスキー・エクスプレス」爆破事件、‘10年3月のルビャンカ駅及びパルク・クリトゥールイ駅での自爆テロ事件、本年1月24日のモスクワ南部ドモジェドボ国際空港到着ロビー近くカフェでの爆弾事件が発生している。昨年の地下鉄爆弾事件の自爆実行犯は、いずれもダゲスタン共和国出身の女性2名とされており、チェチェン武装勢力指導者ドク・ウマロフが犯行声明を出し、今度もロシア領内での攻撃を続けると警告している。これに対して、FSB(連邦保安局)がテロ対策・防止を行っているが、今度もロシア国内で大規模テロが発生する可能性が高い。ただし、ロシア内のテロは特定の権益や日本を狙っているというよりもロシア人全般が標的となっている。地下鉄、鉄道、空港、スタジアム、大型スーパーマーケット、観光地、劇場、政府関係施設など人が多く集まる場所は十分な注意が必要であり、不審な人物(大声で叫ぶ人など)を見かけたらその場を立ち去るなどの警戒が必要。また、地下鉄などは、東京での地下鉄サリン事件、ロンドンやモスクワでのテロ事案を踏まえると(脱線などの被害を大きくするために)先頭車両と2,3列目の車両付近で発生していることから、乗車する車両にも注意してほしい。
(2)治安情勢
昨年12月のモスクワ北部で発生したスラブ系のサッカーファンとコーカサス系住民との間で喧嘩を起因としたスラブ系若者の射殺事件が発生。この事件を契機として同月モスクワ中心部のマネージ広場、キエフ駅周辺、オスタンキノ公園などで大規模騒動が発生、若者数千人が拘束され、スラブ系とコーカサス系住民との間で民族対立が顕著化している。
この対立は今後も拡大する可能性があり、スラブ系の標的はコーカサス系住民だが、日本人もコーカサス系住民と見なされる可能性があり、いわゆる象徴的なスキンヘッドの襲撃などには注意が必要であり、若者集団には近づかないようにしたり、夜間の一人歩きや地下道歩行をなるべく控えるよう注意してほしい。ただし、ロシア全土における襲撃事件による被害者数は、‘08年110人死亡、486人負傷、‘09年60人死亡、306人負傷、‘10年37人死亡、368人負傷と減少傾向にある。
(3)モスクワ市の犯罪情勢
2010年におけるモスクワ市での殺人(582件)及び強盗被害(2、872件)件数は、東京に比べてそれぞれ5倍と4倍多く発生している。一般犯罪を防ぐことはなかなか難しいが日頃から安全対策や注意がリスクを軽減することになる。窃盗被害の件数は、東京の方が多く、スリ被害は東京都と変わらない状況。重傷傷害被害件数は、年々減少傾向だが、犯人の多くは物盗りを目的としている場合は、件数は強盗に含まれるため、重傷傷害被害件数が減少しているからといって安心できる材料とはならないと思う。
(4)交通情勢
ロシアの交通事故による死亡者は、2010年約26、600人であり、日本の4、863人と比べると高い数値となっている。ロシアでは100人の事故に対して11人死亡しているが、日本では100人の事故に対して0.5人が死亡しており、日本の約20倍となっている。
東京とモスクワを比べてもモスクワでは2010年交通事故により763人が死亡しているが、東京では215人が死亡している。特にモスクワで運転や歩行する際には、安全確認や安全運転を心がけるなど事故防止に心がけてほしい。

 

3.邦人犯罪被害(当館より)
(1)邦人被害
当館が認知した昨年(‘10年)の邦人被害件数は38件で,一昨年と同数であったものの,安全対策には引き続き十分な注意が必要(内訳は配布資料参照してください)。
(以下事案の概要)
・強盗等身体に危害を加えられる被害の多くは夜間の単独行動の際に発生しているので,注意願いたい。
・窃盗被害のうちスリは一昨年より2件増加の9件であったが,その多くが地下鉄内又は同駅構内における被害であるので,地下鉄乗車の際の貴重品の取扱いには,今一度十分な対策をお願いしたい。
・空き巣,車上荒らし(含む車体ごとの盗難)も例年数件発生しているので,留意願いたい。
・観光客が多く集まるクレムリン付近周辺で古典的な詐欺(落とし物詐欺,山分け詐欺)が依然発生している。
・不良官憲による賄賂要求等の邦人被害は残念ながら横ばいの状態である。昨年8月~10月にシェレメチェボ空港Dターミナルで続けざまに7件発生した。当館では,邦人からの連絡を受け,直ちに内務省監察局に対し,しかるべく要請を行った結果,11月以降は類似案件は発生していない。そのような行為に遭遇した場合は支払を拒否するとともに,メモを提示(警官の氏名,所属先を特定)し,必ず当館に通報願いたい。
(2)民族間の緊張に伴う注意喚起
警備担当書記官からも話があったが,昨年12月,市内北部でのスラブ系サッカーファンとコーカサス系住民との喧嘩で,スラブ系ファンが銃で射殺された事件を契機に,市内中心部で数千人規模の集会が開催されるなど,スラブ系とコーカサス系との間の民族対立が顕在化していることもあり,不測の事態に巻き込まれないよう,集会や騒動等が発生している場所には近寄らず,場合によっては地下鉄の利用も控える等,安全の確保に努めてほしい。
(3)大規模事件,事故
昨年のネフスキー・エクスプレスの爆破事件,モスクワ地下鉄の連続自爆事件,そして,1月24日に発生したドモジェドボ空港自爆事件とテロ事件が発生している。幸い邦人に被害はなかったが,いずれも邦人が巻き込まれていたとしても不思議ではなかった事件である。今後もモスクワ等中心部を含め,テロ事件の再発は予断を許さない状況にあるので,日ごろから,安全対策を講じておいていただきたい(安全の手引き「テロ事件対策」の項を参照)。特に所在の明確化については,不測のテロ事件等が発生した場合は,当館では直ちに邦人(含む旅行者)の安否確認を行うが,安否情報は万一の場合の早期の支援や被害拡大防止のために極めて重要なものとなるので,御協力願いたい。この点,この場に参加の皆様には真っ先に安否確認をお願いすることになるが,よろしくお願いしたい。
(4)到着通知に関する法律の一部改正について
2011年2月15日より,到着通知の法律が一部改正された。詳細は安全の手引き(2011年3月版,HPに掲載済み)を参照願いたい。また、その後、当該法律の再改正があり、3月25日から施行されるので、以下のなお書きを参照願いたい。
(以下配布資料に記載した改正点等)
(a)高度な専門性を有する労働者として認定を受け労働許可を得ている外国人については,到着から90日以内に到着通知を行う。(新設)
(b)勤務地住所での通知はできない(必ず実際の居住地住所を届け出る)。
(c)現在有効な到着通知の住所が勤務地住所であっても,改めて登録する必要はない。
(d)アパートの家主が到着通知をできない場合は,賃借人がすることができる(勤務先の企業等名義で賃貸契約をしている場合は,公証された賃貸契約書を提示すれば,企業側が通知できる。)。
(e)退去時の抹消通知が不要となった。(出国記録又は別の場所における新たな到着通知の届出により自動的に抹消となる。)
(f)到着通知を巡ってロシア当局とのトラブルが発生しています。トラブルをできるだけ回避するため,引き続き次の事項に注意していただきたい。
①到着通知は速やかに行う(ホテルに宿泊する場合は,ホテル側に手続義務があります。)。
②通知済みの半券を常時旅券と共に携帯する。特にホテル宿泊の場合,チェックアウト時に返却する必要がなくなったので,出国時まで半券を所持する。

なお,明25日付で,今般の法改正以前のように勤務先住所でも到着通知が可能となる改正法(2011年3月20日付42-FZ)が公布され発効する予定であり,明25日からは規則上以前のように勤務先住所でも到着通知が行えるようになる。だたし,移民局での実際の運用面で多少混乱するかもしれないので,問題が発生した場合は領事部にご一報頂きたい。可能な範囲でサポートしたい。

 

4.新型インフルエンザ対策について(当館より)
当館から、別添の資料を席上配布し、新型インフルエンザについて説明(以下要旨)を行った。
(1)2009年4月14日メキシコで多数のインフルエンザ様呼吸器疾患患者が死亡し、新種のA型インフルエンザウイルスであることが確認され、新型インフルエンザ(A/H1N1)と命名され、その後世界的に感染患者発生した。同年5月9日、日本では、国内初の感染患者が確認され、本格的流行が8月中旬から始まり11月末にピークを迎えた。その後患者報告数は減少に転じて翌年‘10年3月初旬には、流行は沈静化した。5月22日ロシアでは国内初の感染患者を確認し、本格的な流行が10月頃始まり、12月初めにピークとなった。ロシア当局が発表した公式なロシア国内感染者数は30319人、死亡者数4人であった。モスクワ日本人学校においては、同年6月末から7月初めに季節外れのインフルエンザ流行がみられた。
(2)2010年8月10日WHOは、新型インフルエンザがポストバンデミック(パンデミックの終息)に移行したと発表、今後は季節性インフルエンザ同様、地域的な流行を引き起こすであろうとの見解。なお、この新型インフルエンザは、パンデミック時に致死的なものに変異することもなく、タミフルに対する広範な耐性が生じることもなく、ワクチンは、ウイルスに対して有効で安全性も高いことが示された。日本では、‘10年12月中旬に流行入りしたが、翌‘11年1月下旬にはピークを迎えたとみられ、患者報告数は減少し続けている。
‘10年におけるロシアでの流行は、サンクトペテルブルグにあるインフルエンザ研究所が11月初旬から、感染者が増加していると公表し、翌‘11年1月下旬から2月初旬に流行のピークを迎えた。その後患者は減少しつつある。
(3)日本の厚生科学審議会は、今回の新型インフルエンザ(もうすぐ季節性インフルエンザになるもの)は、新型インフルエンザ感染症とは認められなくなったと公表し、予防法は従来の季節性インフルエンザと同様に対処する方針となった。
(4)予防接種は、なるべく健康被害の救済制度もあることから日本で受けること望ましい。また、手洗い・うがいの励行、咳やくしゃみのある方はマスクの着用を励行してほしい。
(5)鳥インフルエンザの状況については今回の新型インフルエンザ発生前と大きな変化はなく、今後の新たなインフルエンザウイルスに突然変異する危険は去っていない。

 

5.質疑応答
【JC領事・総務部会長 問1】
本年1月中旬、業務中に邦人駐在員が脳疾患で倒れたので欧米系のプライベート病院、モスクワ市の救急医療(03)の両方に連絡しモスクワ市の救急車が約10分程度で到着したので救急隊員の指示に委ねた。受入病院は会社近くの市立病院の救急棟で外国人を多く受け入れている病院ではなかったが、一刻を争う事態であったのでこの判断は正解であった。然しながらロシアでは患者の容態を逐一医師から確認することができないのが一般的であることを知り、なんとか担当医との連絡をとりつけたが、ロシアでは十分な治療を受けることができないことが判明し直ちに緊急搬送会社にお願いしベルリンへの緊急搬送処置を行い、本人はなんとか一命を取り留めた事案であった。
質問であるが、事故当日に領事部の緊急電話にも連絡して相談したが、領事部からの回答もたまたま医務官が出張中であっため医学的な説明を求めても困難であった。
このような事態に際しての初動の動き方または病院医師と話す際の医学専門的な知識を踏まえたアドバイスなどに関して大使館医務官の助力を得たいが、
大使館医務官はどの程度まで対応ができるかをお聞きしたい。

 

 【当館 答】
疾病、傷病などの緊急時の場合には、初動としては、救急(03)に連絡し速やかに一旦病院に移送して応急措置をとり、海外傷害旅行保険に加入されている方は、同時に早急に日本の保険会社に連絡をとることが重要。通報を受けた日本の保険会社は、保険内容を確認し、当地の保険会社の代理店に処理を依頼する。当地代理店は、契約している当地医師と協議して、国外(たとえばドイツなど)に緊急移送する必要があれば国外の受け入れ先病院を選定し、受け入れ先病院医師と当地医師と連絡して移送のタイミングを決定する。また、当地保険会社は、緊急移送のためのフライトを選定(たとえば、専用のエアアンビュラスや一般商用機)し、同行医師や看護師の確保を行う。
医務官は、ロシア国内で医療行為を行うことは法的にできないため、相談ベースでの対応となるが、初動において、救急車を呼ぶべきかどうかや適当な医療機関の紹介等についてはアドバイスできると思う。
ただし、医務官は、出張等の機会もあり、モスクワに不在となる場合もあるので、その際には領事担当にご相談いただき、医学的なアドバイスが日本語で必要な場合には、日本人医師(一人)や日本語が話せるロシア人通訳 (二人)が在籍する私立病院に対応してもらうことも一案である。
なお、大使館内でもそうであるが、脳疾患など日々の人間ドックの重要性は高いと感じているので、定期的な検査や予防についてお願いしたい。

 

【問1 関連】
年間1万人以上のツーリストを扱っている旅行会社(ツアーオペレーター)では、お客様の中で疾病にて病院に入院されるケースがある。その際に問題となるのが、ビザの延長手続きであるが、人道上の観点で大使館の助力を今後とも得たい。

 

【問2】ドモジェドボ空港の爆弾テロ事件後、空港のセキュリティチェックは強化されているのか。
【JAL支店長 答】
空港では、テロ事件の発生を受けて、空港建物出入り口やアエロエキスプレスにおいてセキュリティチェックが実施されるようになり、空港内のセキュリティ体制が強化されている。セキュリティチェックのために10分程度列に並ぶ時もあり、通常よりも早めに空港に到着することをおすすめしたい。
また、3月19日から放射能検査が航空機を降りたゲート付近で実施されるようになった。チェック体制については、まだ始まったばかりで不明なところもあり、こうした当局の放射能チェックによる運航への影響をフォローしていきたい。

 

(当館)
最後に、本協議会に出席していただき感謝し たい。今後とも、治安等安全に関する情報の共有や安全問題に関する具体的対応策を本協議会で検討して行きたいと考えるので、ご協力を宜しくお願いしたい。

 

(了)