プレスリリース
河野衆議院議長インタビュー (インターファックス通信)
「河野洋平:日本とロシアは北方領土問題の解決に向けた交渉を粘り強く続ける必要がある」
9月15日から17日まで、サンクトペテルブルクにおいて、G8下院議長会合が行われる。同会合を前に、河野洋平衆議院議長がチムール・フルサンドフ「インターファックス」通信社記者に対し、来る会合の中心的な議題に対する見解、露日の二国間関係及び両国間の平和条約締結の展望について語った。 (問1)今回のG8下院議長会議では、「新たな脅威と挑戦に対処するための立法措置」が主要議題の1つである。同分野における国際社会の連携及び各国の法令の統一化に向け、いかに対応すべきか、貴議長のお考えを伺いたい。 (答)グローバル化の進展により、各国間の交流は急激に緊密化している。 この結果、各国が、より大きな発展につながり得る新しい機会を享受する一方で、テロ、大量破壊兵器等の拡散、感染症といった新たな脅威への対処も必要となっている。 重要なことは、これらの課題について国際社会として連携協調し、一致して取り組むことである。 政府レベルではこれら共通の課題の解決に向け様々な努力が行われ新たな国際規範が作成されてきているが、現実に直接問題に遭遇するのは各国の国民であり、又新たな規範のもたらすメリットを享受するのもデメリットに苦しむのも各国の国民である。 この事実は、国民を代表して国政に当たる議会人に新たな挑戦を提供するものであり、議会人はよりグローバルな視野をもって国民の安全と福祉、繁栄に向けて、各国の国内で政府により良い施策を勧めると共に、各国の議会人同士が互いに協調・協力して行くことが必要であることを示している。 主要な先進民主主義国の集まりであるG8は、議会レベルにおいても世界各国からリーダーシップが期待され、注目されている。私は今次会議において、グリズロフ国家院議長の卓越した采配の下で、全世界的な問題について、上記のような視点からG8各国の議長が活発に議論を行い、その議論を通じて国際社会に対する有効なメッセージが発信されることを期待している。 (問2)最近、国際社会ではエネルギー安全保障の問題が注目されている。G8サミットでは、産油国、消費国、通過国の3者全ての利益を考慮すべきである旨のメッセージが提唱された。かかるメッセージに対し、貴議長は如何に対応すべきとお考えか。 (答)エネルギーは各国国民の生活と経済活動に直結するものである。 将来にわたって各国の国民が一定レベルの生活水準を維持して行くためには、グローバルな観点に立って、関係者全ての事情が考慮され、関係者全体の協調によって、エネルギーの生産と使用がなされるべきである。 また、世界経済が持続的な成長を続けていくためには、限られたエネルギー資源をこれまで以上に有効に活用することを通じて長期的な発展基盤を確固たるものとしていくことが極めて重要である。 日本としては、50-60年代の公害、70年代の石油ショックを克服した経験と、自らが有する世界最高水準の省エネルギー技術等を活用することにより、国際社会の持続的な発展に積極的に貢献すべきであるとの強い使命感を有している。省エネルギー分野では、今後も引き続き主導的役割を担っていきたいと考えている。 なお、ロシアを含む産油国、消費国、通過国の3者全ての利益の増進のためには、「エネルギー条約」の諸原則を支持し、貿易、通過、投資の一層の自由化を通じた経済成長を目指すことが重要である。 (問3)テロは国際的な安定を脅かす主要な脅威の一つである。G8の枠内において、同問題との闘いに向けた立法レベルで何らかの措置をとる予定はあるか。 (答)国際テロの問題に対処するため、国際社会では既に十数本のテロ防止関連条約が作成されている。 これらの国際規約はテロを未然に防止するためにも、テロリストに避難所を与えないためにも極めて有効なものと評価している。
主要な先進民主主義国の集まりであるG8は、自ら率先して各国にこれら国際規約の批准を呼びかけるとともに、未批准国が批准できるよう様々な支援を行って行くべきと考えている。 (問4)日露関係における主要な問題は相変わらず平和条約の締結である。両国の議会は、如何に同問題の進展に協力できるとお考えか。 (答)日ロ両国間では、経済分野を始め幅広い分野で交流が拡大しているが、この動きと平行して、平和条約締結問題に正面から取り組むことが必要である。 8月16日に北方四島周辺水域において発生した事件は、非武装の日本漁船の乗組員がロシア国境警備艇に銃撃され死亡するという由々しき事件であり、如何なる理由によっても正当化されない。今回のような事件の背景には、日露間で領土問題が未解決であるという現状があり、こうした事件を繰り返さないためにも、未解決の北方領土問題について相互に受入可能な解決策を見出すべく引き続き粘り強く交渉を続けていくことが必要である。 国際社会において大きな影響力を有する日ロ両国、また将来に向けて大きく発展する基盤をもつ北東アジアにおける隣人同士である日ロ両国としてより強い協力関係を樹立する意義は大きい。 国家同士の関係はそれぞれの国民の十全な理解を得て進められるべきものであり、北方領土問題を避けて通ることはできない。 日ロ間の協力関係強化については、これまで様々な分野で両国政府間の調整はなされているが、両国の議会人が広い視野から、相互に交流し、共通の理解を深める努力をすることは、日ロの政府間交渉を後押ししていく上で有効と考える。 近い将来に日ロ関係を完全に正常化し、ともに発展の道を歩み始める日が来ることを衆議院議長として切に希望している。 (問5)最近、トヨタ、日産等の日本企業がロシアに進出してきている。両国の議会は、貿易高の増加のために措置を講ずることは可能か。また、可能であるとすれば、具体的にいかなる処置か。 (答)近年の日本・ロシア両国間の貿易総額は、2005年に初めて100億ドルの大台を越え、過去最高を記録するなど、目覚しい成長を見せているとともに、日本企業がロシアに進出する機会も増大してきている。 しかし、両国の経済関係はその潜在力に比べ、未だ十分なレベルに達しているとは言い難いものがあり、更なる発展の余地が大きいことは明らかである。 海外との貿易や投資に関する企業行動に関しても、個々の民間企業の自主的な判断に委ねられているが、客観的に見て世界有数の天然資源と高度な科学技術、更には成長著しい国内市場を有する隣国ロシアが日本企業にとって魅力的でないはずはない。 特に、ロシアのWTO加盟が実現すれば、これを契機に、ロシアの貿易・投資環境の整備が進み、日本企業のロシア進出や日露貿易が飛躍的に増大するものと期待される。 現在、日露政府間の合意に基づいて、日本側は2004年6月に、ロシア側は2005年4月に活動を開始した「日露貿易投資促進機構」では、両国の関係機関の連携強化を通じ、二国間の貿易投資の拡大を促進するための情報提供、コンサルティング、紛争処理支援等を通じた日露間のビジネス環境の整備が図られている。 両国議会においても、これまで以上に対話と交流を促進し、高い潜在力を有する日露経済関係が更に発展するよう、貿易・投資環境を整備するための措置について検討していくことができよう。 |