2015年「新しい日露関係・専門家対話」開会式における大使挨拶
ご列席の皆様, まず,本年の「新しい日露関係・専門家対話」の会議開催のためにご尽力されたモスクワ・カーネギー・センター,安全保障問題研究会,ユーラシア21研究所を始めとする関係者の皆様に敬意を表したいと思います。 この専門家対話は,その前身である「日ソ専門家会議」が1973年に初めて開催されて以降,今回で31回目となる伝統ある会議です。ソ連時代を含めこの間の日露関係を振り返ると,様々な要因により,良好な時期もあれば,困難な時期もありました。現在,ウクライナ情勢が遺憾な状況にあるために両国関係は複雑な局面にあるといえます。他方,変わらず重要なことは,隣国である両国が安定した良好な関係にあることが,両国のみならずアジア太平洋地域を含む国際社会の利益となることです。そして両国関係がいかなる状況にある時も,両国間の対話,知的交流は相互理解を深める上で重要かつ必要な役割を果たしてきており,それがこの専門家対話の一貫した重要性につながるものであります。 今回の会議の全体テーマは「国際関係の急速な変容」であると承知しています。欧州,中東,東アジア等各地域情勢が各々の要因によって変容しながら相互に影響し合い,その結果,戦略環境を含む国際関係は不安定感と不透明感を増すとともに緊張をはらんだものとなっています。他方で,テロ対策や地域問題への対応など,国際社会が一致して取り組むべき課題は山積しています。そのような中で,国際社会の重要なプレーヤーである日本とロシアの対話と協力は重要性を増していると思います。 こうした観点からも,本年2月に安倍総理が施政方針演説で述べられた通り,日本政府としては,本年の適切な時期にプーチン大統領の訪日を実現したいと考えており,これまでの首脳会談の積み重ねを基礎として,政治,経済,文化等幅広い分野で協力を深めながら,平和条約の締結に向けて粘り強く交渉を続けていきます。2013年の安倍総理訪露の際の両国首脳の共同声明にもある通り,両首脳は,両国関係の更なる発展及び21世紀における広範な日露パートナーシップの構築を目的として,北方四島の帰属の問題を,双方が受け入れ可能な形で,最終的に解決することにより,平和条約を締結するとの決意を表明しており,今後,この決意を交渉により具体化していくことが両国にとり極めて重要な共通課題であります。 今回の会議では,日露を代表する有識者・専門家の皆様の間で,現下の国際情勢や両国関係の今後について自由闊達に有意義な議論が行われるものと思います。最後に,今回会議の成功を祈念し,私の挨拶とさせていただきます。
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