日露関係

 

経営者養成大統領プログラム15周年記念国際会議における
井出敬二次席公使来賓挨拶

(2012年11月2日,於:ロシア国民経済・国家公務アカデミー)


 

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 まずはじめに,経営者養成大統領プログラムの15周年に際し,日本国政府,日本国大使館を代表して心からお祝い申し上げます。また,経営者養成委員会のメンバーをはじめ,大統領プログラムの実施に大きな貢献を行ってきたこれまでの関係者の努力に敬意を表したいと思います。

 

 大統領プログラムは,その開始以来,高い資質を備えたロシアの経営者・管理者の育成に大きな成果を挙げるとともに,近年は,ロシアと諸外国とのビジネス・パートナー関係の構築にも貢献していると承知しており,我が国として同プログラムが果たしてきた肯定的な役割を高く評価し,我が国がこれまで協力してきたことを誇りに思っています。

 

 我が国としても,1998年以来,在ロシア日本国大使館,日本国総領事館及び日本センターを通じて大統領プログラムの実施を積極的に支援してきています。日本センターは,ソ連崩壊後の市場経済への移行を支援すべく1994年に設立された組織であり,現在は,モスクワ,サンクトペテルブルク,ニジニ・ノヴゴロド,ウラジオストク,ハバロフスク,ユジノサハリンスクの6つの日本センターが,ロシア側パートナー及び我が国大使館・総領事館との緊密な連携の下,日露間の経済・ビジネス交流を促進するための様々な事業を実施しています。

 

 これまでに約55,000名のロシア人が日本センターの各種講座を受講し,4,100名以上が訪日研修に参加しています。このうちの過半数に上る2,178名が大統領プログラムの枠内での訪日研修生であり,同プログラムに対する日本政府の直接的な貢献として位置付けられます。

 

 これらの訪日研修生の中には,研修で得た知見と人的ネットワークを活用して,日露間貿易をはじめ,日露間の具体的なビジネスに従事している方も多く見られます。

 

 我が国は,これまでの大統領プログラムとの協力を高く評価しており,これまでの経験を踏まえ,今後の我が国の協力の方向性につき,以下の3点を重視していることを申し上げたいと思います。

 

 第1点目は,近代化・イノベーションに対する協力です。我が国は,省エネ・環境技術,医療・製薬業,農業分野等を目下の日本センター事業の重点分野に指定しており,訪日研修・OJT研修を通じて近代化・イノベーションを推進するロシア側の努力を積極的に支援しています。これらの研修では,我が国を代表する企業のハイテク技術・最新技術を紹介するのみならず,これらの技術を活用した管理・経営ノウハウを併せて教授し,また,関連する日本企業関係者とビジネス交流を行う機会も提供されます。この分野では,本年は,「省エネ・環境配慮型住宅建設」,「リサイクル,生活廃棄物処理システム」,「医療技術・サービスの近代化」及び「製薬業」をテーマとした研修を実施しました。

 

 第2点目は,極東・シベリア重視です。我が国は,日本センターを設置しているウラジオストク,ハバロフスク,ユジノサハリンスクで様々な研修事業を実施しているほか,ノヴォシビルスクやウラン・ウデでも巡回講座を実施しました。近年,ロシア側から,特にシベリア地域での研修事業の実施及びこの地域からの研修参加者の拡大につき要望がなされており,我が国としては,引き続き極東・シベリア地域に特別の考慮を払っていきたいと思います。

 

 第3点目は,日露ビジネス関係の強化・促進です。ロシア経済の近代化は,資源依存型経済から「モノ作り経済」への転換を図ることを意味しますが,資源に恵まれない我が国が経済発展を遂げるための手段としてきたのがまさに「モノ作り」です。

 

 日本センターにおいても,これまで「運輸・物流」,「木材加工」,「建設・輸送機械」サービス,「自動車産業」といった個別の産業分野における研修を実施してきており,駐ロシア日本国大使が日本人ビジネスマンとともにロシア各地を訪問する際には,大統領プログラム修了生・訪日研修生との面会も行っています。

 

 今やロシアの各都市には,「トヨタ」,「日産」,「三菱自動車」,「マツダ」,「コマツ」,「日立建機」といった我が国の主要な自動車・建機企業とその関連企業の工場が建設されています。日本からの直接投資の累積額は,日本側公式統計によれば昨年末で17億ドルですが,公式統計に捕捉されない第三国経由の直接投資を考慮すれば,100億ドルを超えるかもしれません。さらにオフショアを除けば,日本は対露直接投資国として上位の5位までに入ります。

 

 自動車・建機分野にとどまらず,日本企業の活動分野は,機械製造から肥料生産,日用品生産まで多岐にわたっており,今後,多くの日本企業が部品製造を含めた本格的な「モノづくり」をロシアで行っていくことが見込まれています。

 

 このように日露協力の裾野は大きな広がりを見せ始めており,大統領プログラムへの貢献においても,我が国として,引き続きこのような「Win-Win」の日露協力を推進する「核」となる人材の育成とビジネス・マッチングを重視していく考えです。

 

 日本政府としては,以上申し上げた諸点を踏まえ,引き続きロシア側パートナーと緊密に連携しつつ,日本センターを通じて大統領プログラムの実施に可能な限りの貢献を行っていく考えです。我が国が,ロシアにおける「人づくり」,そして,日露間のビジネス・マッチングを積極的に支援していくことによって,日露経済協力での更に多くの成功事例を生みだしていきたいと考えます。

 

 ご静聴有り難うございました。