東日本大震災の際のロシアからの温かい支援

 

1. 政府首脳からのメッセージ

    (1) メドヴェージェフ大統領から以下のとおりメッセージを頂きました。

    3月11日菅総理宛メッセージ

    「人命を奪い,深刻な破壊をもたらした,日本を襲った深刻な自然災害 -強い地震及び津波に関する知らせを,心痛とともに受け取りました。ご遺族への心からのお悔やみと被害を受けた方々への支援の言葉をお伝え頂きますようお願いします。ロシアは,この悲劇の結果の克服のために,必要な支援を日本に提供する用意があります。」

    (2) またスヴェトラーナ・メドヴェージェヴァ大統領夫人は以下のとおりメッセージを述べています。

    3月14日菅総理夫人宛メッセージ

    「日本を恐ろしい災害が襲ったとの報せに接し,心を痛めております。ご家族を亡くされた方々に心からの哀悼の意をお伝えいただくとともに,被災された皆様の一日も早い回復を希望していること及び地震と津波がもたらしたものと闘っておられる全ての方へ応援の言葉をお伝えしていただきますようお願いいたします」

    (ロ)またスヴェトラーナ夫人は21日に在ロシア大使館を献花,記帳のため訪問され,以下のメッセージを記帳しました。

    「日本における悲劇的な出来事に私とロシア国民は大変に心を痛めました。全ての日本国民に対し心からのお見舞いとお悔やみの言葉を表するとともに,力強さ,勇気と不屈の精神で自然災害の結果を克服されることを望みます。

    (3) プーチン首相は政府の会議において以下のとおり述べました。 「首相として再度日本政府に、日本で発生した悲劇及び多くの人的犠牲に関し哀悼の意を表明します。日本は我々の隣人で、友好的な国です。我々は過去から取り組んでいる問題について知っています。しかし、日本は我々の長年の信頼できるパートナーです。この事態に際し、日本にできる全ての援助を行わなければなりません。」

 

2. ロシアからの救助チームの派遣及び支援物資の送付

    (1) ロシアからはロシア非常事態省の160人規模の救助チームが派遣され,3月14日から19日までの間,宮城県石巻市周辺にて救助活動を行いました。

ロシア非常事態省のサイトより引用

     

ロシア「第一チャンネル」(«первый канал»(Россия))サイトより引用

 

    (2) 残念ながら生存者発見には繋がりませんでしたが,ロシアの救助チームは体力に優れ,捜索活動に熱心で,倒壊した家屋に臆することなく入り,時には担当区域を越えて捜索活動を続けるほどでした。ご遺体が道路から遠く離れて搬送が困難な場所で発見された場合でも,「このまま置いておくわけにはいかない」と困難を押して搬送しました。タンクが壊れ,人体にとって危険な冷凍用のアンモニア溶液が垂れ流しになっているのをみて,危険を冒して手作業で修理する場面もありました。

     

    (3) またロシアの救助チームの隊員は,被災者の方の礼儀正しさと規律に感銘を受けている様子でした。ある隊員は,「自分はいろいろな国で救助活動を行ってきたが,被災地では大体において犯罪が横行し,時には銃撃戦の中で作業をすることもあった。日本では,全ての人が警察を協力して,規律正しく振る舞っている」と述べていました。また帰国のために立ち寄った新潟において,部隊の隊長は「日本人は偉大な民族だ。このような災害に遭っても,泣き叫ぶこともせず,略奪もせず,人を責めることもせず,黙々と(復旧)作業を行っている。ここ新潟でも地震があったことを承知しているが,今はその痕跡すらないではないか。日本人は,今回の災害も必ずや乗り越えるに違いない」という言葉を述べていました。

     

    4) 3月19日にはロシア非常事態省の航空機によって,毛布17200枚,水3.6トンが成田空港に運ばれ,20日に宮城県に届けられました。

3. 当地有名人チャリティーイベント

    (1) ロックバンド「マシーナ・ブレーメニ」やチャイコフスキー・コンサートホール,チャイコフスキー名称モスクワ音楽院等数多くの場所でチャリティーコンサートが行われました。

     

4. 当館への献花(正門)及び義援金

    (1) 日本における地震,津波の被害が当地でも大きく報道されるにつれ,3月11日から在ロシア日本国大使館前に多くのロシア人の方が,花やチェブラーシカのぬいぐるみ,折り鶴やメッセージや絵を手向け,祈りを捧げて下さり,約3000名の方が訪れました。

     

    (2) 当館口座,ズベルバンクのロシア赤十字名義口座及び現金にて当館に多額の義援金が届けられています。このうち,当館でお預かりした義援金は日本赤十字を通じて被災者にお渡ししています。また様々なロシア企業が義援金の呼びかけを行ってくださっています。

     

    (3) 大使館で義援金の受け付けを開始した直後から,多くの方が温かい支援の手をさしのべてくださっています。あるロシア人紳士は,「がんばってください」と一言だけ言い残し,信じられないくらいの多額のお金を預けられ,また老齢のご夫人が「年金生活で多くは支援できないが,私ができる最大限の寄付をしたい」としわしわのお札を寄付し,お祈りをされていきました。またアルメニア系の男性は,深くお祈りをするとともに,義援金を預け,「アルメニアの大地震(1988年)の際,私は親戚を5人失い,子供も1人亡くした。(傷を見せながら)自分も頬に傷を負った。今回テレビで日本の地震の映像が流れているが,人ごととは思えない。自分は地震を乗り越え,今ロシアでビジネスマンとして仕事をしている。日本人は頭がいい民族だ。すぐに地震から復興できるはずだ。出来ることがあればなんでも言って欲しい。」と我がことのように心配して頂きました。ご婦人が義援金を渡すなり,涙を流し「日本は必ず復興します」と元気づけてくれたこともあります。

5. ロシアの子供達からの温かい励まし

    (1)「モスクワ第一ギムナジウム」
    当地の小中学校にあたる「モスクワ第一ギムナジウム」から生徒達が集めた毛布などの支援物資及び日本の子供達への励ましの手紙や絵が大使館に届けられました。

「私たちは貴方たちと共に」

     

     

「私たちは貴方たちといつも共に」
「愛しています」

     

           
    

    (2) 孤児院「若き親衛隊」
    モスクワ郊外の孤児院「若き親衛隊」の子供達が,日本の子供達を励ましたいとして折り紙で鶴を折り,またメッセージを添えて大使館まで来訪して手交して下さいました。

    (3) 第1959学校
    モスクワ市内の「第1959学校」からも日本の子供達を支援するための見事な千羽鶴を頂きました。

 

 

    (4) トヴェーリ州ルジョフ市
    モスクワ州の北西に位置するトヴェーリ州ルジョフ市に住む小学校3年生のコスチャ君は地震の被害を伝えるニュースを聞き,日本の子供のために何かできないかと父親に相談し,町役場を訪れ日本の子供達を支援したいとの意向を伝えました。コスチャ君の気持ちに賛同した同市の子供達が日本の子供達のために絵や刺繍を作り,大使館まで届けて下さいました。

 

 

6. 日本人の規律正しさを讃え,日本を応援する報道

当地では地震,津波の被害及び原子力発電所の状況が大きく報道されると同時に,災害時における日本人の規律正しさを讃え,日本を応援する報道もなされています(以下概要)。

    (1) 3月14日付「コメルサント」紙:クナッゼ元露外務次官の言葉) 「日本国民を支援し,犠牲者の哀悼を共有し,自然との闘いへの勝利を祈りたい。日本について多少の知識があるが,そうなると確信している。民主的な日本にあっては,権力は有権者の支持に依存する。しかし,困難の時には,権力は自らの支持率ではなく,責任について考える。国民は過去にない程団結する。被害は甚大だが,復興に向けた日本人の意思の方が大きいであろう。

     

    2) 3月17日
    (イ)「ロシア新聞」紙
    「日本で発生した恐ろしい自然災害は全世界を驚愕させた。しかし,世界では,日本の破壊や犠牲についてだけではなく,日本人の気質や,規律正しさ,持久力についても話している。」

    (ロ)「ロシア新聞」紙(週刊版:各界からの声)
    「日本のビジネスが如何に災厄に反応したかに感動した。東京の人が自分に述べたところでは,飲み物,たばこ等の自動販売機は,所有者により即座に無料で品物を提供するように設定変更された。(1月下旬にテロ事件が発生した)ドモジェドヴォ空港でタクシー運転手が何をしたかと比べて欲しい。」

    「日本で震度5の地震の際,警官が冷静に交差点で交通整理をしているのを見れば,この高度な規律性を持つ,責任感ある人々の偉大な可能性を疑うことはない。日本人には,このような知性があり(残念ながら,我々は20年前に失った),このことはあらゆる自然災害が終わった後,速やかに全く新しい国を造るのを助ける。」

    「悲劇の最初の日からTVに出ている枝野官房長官の不屈さ,忍耐と精神力の強さ(に感激した)。国民に作業の進捗と状況の微小な変化を報告している。ブロガーは,彼が毎時間TVに出て,105時間眠らずに過ごしたと計算した。枝野長官の好意は,試練の時に国のエリートが国民と共にあることを示している。」

    「地震から今日まで,甚大な破壊にもかかわらず一件の略奪も報じられていないことは信じがたい。自分の考えでは,最も発展した国でさえも,自然災害時の大量の略奪行為は避けられなかった。」

     

    (3) 3月21日
    (イ)「ロシア新聞」紙
    「(無料の電話,インターネット,TVが設置された避難所の状況等を紹介しつつ),日本人は悲劇の中で自制と自尊心を保つ驚くべき国民である。」

    (ロ)「独立新聞」紙(日本留学生のルポ)

    「今次地震に関するあらゆるニュースを迅速かつ的確に伝えている日本のマスコミを高く評価する。原子力発電所の事故について冷静かつ客観的に事実を伝える日本の政府の対応に敬意を示す。震災後の都心は,断続的な揺れが続いたにもかかわらず,如何なるパニックも生じず,人々は概して平静を保っていた。」