ヴェリホフ国立科学センタークルチャトフ研究所名誉総裁への叙勲伝達式における上月大使祝辞ヴェリホフ閣下,尊敬する淑女紳士の皆様,こんばんは。 本日,我々はヴェリホフ博士が天皇陛下より旭日中授章という高い勲章を受章されたことに対してお祝いするために集いました。 科学アカデミー会員であり物理・数学博士であるヴェリホフ氏は,長年に亘って世界最大の科学センターの一つである国立科学センタークルチャトフ研究所を率いておられます。ヴェリホフ博士の科学・組織上の功績はいくら高く評価してもしすぎることはありません。 ヴェリホフ博士は,チェルノブイリ原子力発電所事故の際,一番に現場に駆けつけ,その処理に先頭に立って取り組まれました。ゴルバチョフ政権及びエリツィン政権の時代には核軍縮運動を積極的にリードされてきました。 ヴェリホフ博士は,約40年に亘り日露間の学術交流の発展に大きく寄与されています。2003年1月に当時の小泉総理が訪露した際,クルチャトフ研究所に立ち寄りました。同訪問は国際熱核融合炉(ITER)計画等を巡る日露科学協力の深化のために行われました。その際,私は外務省ロシア課長として総理に同行し,ヴェリホフ博士にお目にかかる光栄を有しました。小泉総理は,自身の演説において日露両国の科学者達は真に人類の幸福につながるような研究協力を進めていく力があると信じている旨述べられました。このことは「私たちの政府と国民が,科学を,人類の幸福のためにだけ使っていくことを強く信じている」というクルチャトフ博士の有名な言葉にならったものです。 ヴェリホフ博士の貢献は,とりわけITER計画に関連しています。ITER計画には日本とロシアを含む7極のパートナーが参加しています。同プロジェクトは,ヴェリホフ博士の多大なるご尽力が無ければ,今日の姿はなかったことでしょう。 そのため,本日は,日本で核融合研究を推進してこられた森英介衆議院議員及び上川陽子衆議院議員からの祝辞をお伝えすることを大変嬉しく思います。 また,本日は,尾身幸次「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム」(STSフォーラム)理事長からも祝辞が接到しております。同フォーラムにおいては科学技術協力に関する世界共通の問題が議論されています。ヴェリホフ博士は同フォーラムの創設に多大なる貢献をされ,現在,同フォーラムは毎年京都で開催されています。 この場をお借りして,ヴェリホフ博士の功績を基に,核物理分野における日露科学技術協力を一層発展させるべく取り組んでいくことを強調いたします。また先般のソチにおける日露首脳会談で提案された協力プランに原子力が含まれていることを指摘したいと思います。 最後に,改めて尊敬するヴェリホフ博士の受章をお祝い申し上げ,博士と博士を長年支えてこられたご夫人のヴェリホヴァ女史の益々のご健勝を祈念するとともに,日露の良好な協力が続いていくことを祈念して私の挨拶とさせていただきます。 ご静聴ありがとうございました。
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