大使の主要スピーチ

 

平成27年度外務大臣表彰授賞式大使挨拶
(平成27年11月10日(火)18時~於:大使公邸)

親愛なるカチャン合気道クラブ「央心館」館長,メシェリャコフ・ロシア国立人文大学教授,そしてご列席の皆様

本日は、2015年日本国外務大臣表彰授賞式にお集まりいただき、誠にありがとうございます。受賞者の皆様に対し、本日お集まりのお客様とともに、外務大臣表彰受賞を心からお祝い申し上げます。

今回受賞されたのは、カチャン合気道クラブ「央心館」館長とメシェリャコフロシア国立人文大学教授です。それぞれの功績につき、ご紹介します。

はじめに、カチャンさんです。カチャンさんは,合気道6段の達人で,1983年より30余年にわたりロシアにおける合気道の普及に尽力してこられた,ロシアにおける合気道の創設を担った一人であります。カチャンさんは3000人以上の会員を擁するロシア最大の合気道クラブ「央心館」の館長を務め,モスクワ合気道連盟会長やロシア政府のイニシアティブにより創設されたロシア武道連盟の上級委員会委員等を務めた,ロシア武道・スポーツ界の重鎮です。ご本人は,1990年にロシアの合気道家として初めて東京の合気会本部道場を訪問し研修に参加し,以降毎年本部道場の研修に参加し本部道場との揺るぎない信頼関係を築きました。武道の種目によっては,多くの流派が林立しともすれば反目しがちな中で,ロシアの合気道団体がまとまりをもった活動を行っているのは,本部とロシア合気道との連携の要であるカチャンさんの存在が大きな役割を果たしています。

また,昨年は日露武道交流年として合気道を含む多くの武道の分野で日露の交流が一つ上のレベルへと達した記念の年となりましたが,カチャンさんは同年ロシアを訪問した代表団の受け入れに尽力するとともに,ご自身も「央心館」のセミナーを行うなど交流年の成功に大きく貢献されました。

次にメシェリャコフさんです。メシェリャコフさんは,ロシアを代表する日本研究者の一人であり,専門分野である歴史や文学に関する著作は約300点に及びます。1973年の大学卒業以降,ロシア科学アカデミー東洋学研究所付属大学院で研究を続け,2001年に名門大学であるロシア国立人文大学の教授に就任されました。研究者としては,古事記,日本書記,徒然草など日本の精神を理解する上で欠かすことのできない歴史的作品から,川端康成や石原慎太郎など現代の文豪にいたるまで多くの翻訳を手がけられ,ロシアにおける対日関心・理解の向上に大きな貢献をなされました。 また,メシェリャコフさんが立ち上げた「日本の歴史と文化」学会は,本年第17回を迎え,70名超が発表する当国最大規模の学会となっています。この学会には日本からも研究者が参加するなど,日露の学術・知的交流の重要な機会となっています。

また,メシェリャコフさんは,教育者として今日に至るまで500名を超える学生を指導されました。メシェリャコフさんが教鞭を執っておられるモスクワ国立人文大学からは,多くの学生が日本への国費留学やフェローシップに採用されており,人材育成という側面からも日露関係の発展に大きく貢献されていると言えるでしょう。

カチャンさんとメシェリャコフさんのこれまでの貢献に感謝と敬意を表し、武道交流や知的・人的交流を通じた相互理解の促進に今後もますますご尽力頂けるようお願いして、ご挨拶と致します。

ありがとうございました。