大使の主要スピーチ

 

「着物の変容:久保田一竹のアート」展開会式
原田大使挨拶文
(平成26年1月14日(火)17時~於:マネージ中央展示ホール)

 

 

   

   親愛なる皆様,新年明けましておめでとうございます。

 

   この度、モスクワ・マネージ中央展示ホールにおいて,「着物の変容:久保田一竹のアート」展が開催されますことを大変嬉しく思います。本展覧会の主催者である,モスクワ市,マネージ博物展示協会,ショディエフ国際慈善基金の皆様に感謝の意を表します。

 

   1917年に生まれた久保田一竹は,20歳の時,14~16世紀の室町時代に栄え,その後こつ然と姿を消した幻の染め「辻が花」と出会い,その美しさに魅了されました。戦後,「辻が花」の研究に没頭し,1952年,「一竹辻が花」と呼ばれる技法を発表して注目を浴びました。その作品は絵画芸術でもあり,日本国内はもとより海外での展覧会も多く,高い評価を得ています。1990年にはフランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章されたのもその一例です。

 

   1994年,富士山の麓にある山梨県に久保田一竹美術館を開館。2003年,久保田一竹は逝去しました。2010年に同美術館は倒産し,所蔵作品が競売にかけられることとなりましたが,以前から同美術館を訪れ,「一竹辻が花」に強い感銘を受けていたファタフ・ショディエフ氏が,同美術館の全作品を購入することを通じて,貴重なコレクションの散逸を防いでいただきましたことに深く感謝しています。本日ご覧頂く久保田一竹のコレクションは,「一竹辻が花」そのものの美しさのみならず,日露の友好と善意が鏤められていることを心にとどめていただきたいと思います。

 

   「着物の変容:久保田一竹のアート」展は,モスクワの後,サンクトペテルブルグ,フランス,米国等々,世界各地で開催予定と聞いております。本展覧会を通じてロシアの人々に日本文化や日本人の心の一端に触れていただき、日本への理解がより一層深まることを祈念いたします。

 

   最後に,新年における皆様の御健勝と御多幸を祈念させていただきます。
   ご静聴ありがとうございました。

(了)