イリーナ・アントーノヴァ氏への叙勲伝達式大使挨拶
尊敬するアントーノヴァ総裁,御列席の皆様,
この度は天皇陛下より旭日重光章を授章されたことに対して,アントーノヴァ総裁に対して本日お集まりの皆様とともに,心よりお祝いを申し上げます。
アントーノヴァ総裁については,改めてご紹介するまでもありません。一言で言えば,「伝説の人」です。1961年に38歳の若さで世界有数のプーシキン美術館の館長に就任されると,当時の厳しい思想統制にもかかわらず,「マチス」展や「モスクワ-パリ」展,「モスクワ-ベルリン」展,「セザンヌとロシア・アヴァンギャルド」展などを通じて,いわゆる西側諸国の美術のロシアへの紹介や,それらの国との文化交流を行われました。大変な勇気と信念がなければなしえないことです。
次に,日本に対する功績について触れたいと思います。プーシキン美術館には,欧州最大のコレクションと言われる約3千点の浮世絵をはじめ,7千点にも及ぶ日本美術品が所蔵されていますが,アントーノヴァ総裁の就任以前は4回しか実施されなかった日本美術展が,就任以後は20回以上実施されています。また,日本美術の専門家の育成や図録等の出版,近年ではインターネットによる浮世絵の紹介などが積極的に行われています。 一方,同美術館での紹介は,日本美術にとどまりません。1968年の草月華展はロシアでの生け花の普及の端緒となりました。近年では,2011年に世界的に有名な「東京クヮルテット」の公演が行われ,今年3月には日露の有志で実施された震災関連チャリティー事業「地球の涙 津波の涙」に美術館施設が無償提供されるなど,同美術館は日本文化紹介の大きな拠点となっています。 さらに,欧州美術を中心に世界有数のコレクションを有する同美術館は,所蔵作品の日本での展示を通じて,日露美術交流に大きく貢献しています。最近では,今年4月から12月まで名古屋,横浜,神戸で「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」が開催され,多数の観客を集めて,大好評のうちに終了しました。 これらが実現したのは,アントーノヴァ総裁の積極的なイニシャティブのおかげであり,心から感謝を申し上げたいと思います。
それでは,アントーノヴァ総裁に対する旭日重光章の授与を執り行わせていただきます。 (了)
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