原田大使挨拶
ご列席の皆様、「黒森神楽(くろもりかぐら)」公演の開催にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
黒森神楽は、3月11日に日本で起こった東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県を本拠地とする神楽であり、貴重な民俗芸能として、2006年に日本の重要無形民俗文化財に指定されています。今回のモスクワ公演は、25年ぶりの黒森神楽海外公演となります。
神楽といっても、皆様にはわかりにくいかも知りません。とても古くから行われる芸能です。日本の神話によれば、太古の昔、日本がまだ神々の国であった頃、太陽の女神が、乱暴者の神の振る舞いに怒って洞窟にこもり、入り口を固く閉ざしてしまったせいで、世の中が真っ暗になってしまいました。困った神々は、その洞窟の前で踊りに巧みな神に踊らせ、女神をうまくおびき出したことで、世の中に光が戻りました。その踊りが神楽の起源だという説もあります。
神楽は日本のいろいろな地域に伝承されており、その中で、いろいろな発展を遂げてきたと思いますが、どれも、神々を敬いながら、地域の人々の幸福や安寧を願うものであると思います。
黒森神楽は、岩手県から宮城県にかけての広い海岸地方を一年おきに巡回するものですが、ここは、東日本大震災の一番の被災地の一つです。踊り手も、プロがいるわけではなく、地域の普通の市民の中で、踊りに秀でた方が選ばれ、踊るという形態ですが、そのことが震災からの復興に向けた地域コミュニティーの連帯を強め、一日も早い復興に向けて被災者を大きく励ますものとなるのではないでしょうか。
震災の発生以来、ロシア政府とロシア国民から暖かいお見舞いと支援を頂くと共に、非常事態省の救援チームの派遣や支援物資の提供を受け、また、様々なチャリティー・イベントや義援金、子供たちからの励ましの手紙などを頂きました。
被災地の状況は、様々な課題が残されているとはいえ、多くの方々の努力や支援により、大きく改善しつつあると思います。
ロシアの方々の物心両面にわたるご支援に感謝し、一日も早い復旧・復興を念じながら、被災地の伝統文化を代表する「黒森神楽」を皆様と一緒に鑑賞したいと思います。では、黒森神楽公演をお楽しみください。
ご静聴ありがとうございました。
(了)
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