安全情報

 

 

 

2014年4月~6月までの当地治安関連情報

 

  1. 治安・社会情勢(一般治安情勢,政治的安定度,反政府勢力の動き,対日感情の変化)
  2.    (1)一般国民による反体制抗議運動は,集会法の罰則強化やNPO外国エージェント法採択等の締め付け策により鎮静化しつつあるが,社会の不満は依然として解決されるには至っていないといわれている。昨年10月,コーカサス系住民によるスラブ系男性殺人事件に端を発し,民族間の緊張が高まりモスクワ南部で騒乱が発生した他,当局による不法移民取り締まりが強化され,多数の不法移民が摘発された。また,11月4日の民族統一の日には不法移民の取り締まり強化等を掲げる大規模な行進が行われるなど,民族間の緊張が高まった。
       (2)ロシア国内では,現下のウクライナ情勢に伴い,ロシア国内で治安上の懸念を示す兆候は現時点でない。他方,今後一般犯罪の増加,ウクライナに隣接する地域の不安定化,愛国主義の高揚による排外的機運の高まり等を注視していく必要がある。なお,3月5日,モスクワ市内において,ウクライナ情勢に関する反戦集会が開催され,50人が拘束された(4月13日には,反政府集会も開催)。
       (3)ロシア国民に対日感情は一般的には良好であるが,反面,北方領土問題などで民族主義者や各種団体が当館に抗議することもあり,複雑な側面がある。
       昨年6月19日,「もう一つのロシア」構成員を名乗る若者約10名が大使館前でビラ配布を行う等の抗議活動を展開し,4名が逮捕される事件が発生した。今後,同様の抗議活動が当館や日本関連団体・企業等に対して行われる懸念があり,警戒が必要である。なお,1月31日,モスクワ市トリウムファーリナヤ広場において,爆竹及び発煙筒を用いて騒ぎを起こした25名が警察に拘束され,この中には「もう一つのロシア」の指導者が含まれていたと報道された。また,6月16日,在ロシア・ウクライナ大使館において「もう一つのロシア」構成員4名が同館敷地内へ発煙筒を投擲し,侵入を試みたが,その場で身柄を拘束された旨報じられた。
       (4)不安定な北コーカサス情勢を背景にしたテロが引き続き頻発している。従前,テロが頻発してきたダゲスタン共和国に加えて,ボルゴグラードで同年10月に,路線バスを標的とした自爆テロ事件,また,12月には連続して鉄道駅及びトロリーバスを標的とした自爆テロが発生した。
       今年4月,ロシア治安当局は,テロ事件を主導したとされるドク・ウマロフの死亡を確認したと発表したが,これと前後して,北コーカサス武装勢力は新たなリーダーが指名されたと発表するなど武装勢力側に変化が生じている。今後,新勢力がプレゼンスを示すことを狙ったテロが発生する懸念もあり,引き続き警戒が必要である。

     

  3.  一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
  4.    (1)2013年のロシアと日本の犯罪統計を比較すると,窃盗や傷害事件は大きな差はないが,殺人事件はロシアが日本の13倍,強盗事件は日本の5倍となり,凶悪犯罪件数に大きな差がある。モスクワ市における過去7年間の各犯罪登録件数の推移は,殺人,強盗,窃盗件数は減少傾向にあるが,傷害件数は横ばいである。また,当地では外国人排斥を唱える民族主義者が多数存在しているといわれており,これらの者が標的にする中央アジア人は,日本人と外見が似ていることから注意が必要である。
       なお,モスクワ市内務総局の発表によると,近年モスクワ市においては,地方都市出身者及び外国人の銃器の所持率が増加しており,銃器を用いた犯罪も増加している。現在,モスクワ市内では約40万人が60万丁を超える銃器等を所持しており,日常のトラブルにも銃器が持ち出されることもあり,注意を要する。
       (2)【邦人被害】
    ●4月30日,モスクワ南部の邦人が多く入居するアパートで,日本から着任したばかりの在留邦人が、前任者から引き継いだアパートの部屋に引っ越した際に、ビル管理会社との鍵の引き渡しの時に一時的に鍵が所在不明になり,部屋内においていたスーツケース等の荷物が全て盗まれた。
    ●5月1日午前1時頃,モスクワ市第1コプテーリスキー横町の路上において,在留邦人が何者かに殴打された。犯人は,20代でスラブ系の特徴をした男性。
    ●5月29日午後11時頃,邦人留学生が、地下鉄5号線(灰色線)に乗車中、ポケットに入れていた携帯電話をすられた。
    ●5月31日15時頃,当地在留邦人が、ウサチョヴァ通りに駐車していた自動車の車内に置いていたバッグを盗まれた。
    ●6月10日午前11時頃,邦人留学生が、メトロ・アカデミチェスカ駅周辺の路上で,2人組のコーカサス系の男らに、ロシア語で話しかけられ、無視したところ、2人組が同人の腕をつかんできたので振り切ったが、その間に携帯電話を強奪されたもの。
       (3)【邦人以外の外国人の被害】
    ●4月21日午前1時頃,モスクワ市内の地下鉄ソコリニーチェスカヤ線パルク・クリトゥーリ駅からクロポトキンスカヤ駅へ向かう地下鉄車両内において,北カフカス地方出身の27歳男とベラルーシ国籍の4名が乱闘となり,北カフカス出身の男がけん銃数発を発砲した。この事件においてベラルーシ国籍の男性1名が頭部を負傷し,病院へ搬送された。発砲した北カフカス出身の男は警察に逮捕された。
    ●4月25日午後7時30分頃,モスクワ市ブマージュニ横町のトルコ人が経営する建設会社の寮において,何者かがけん銃数発を発砲し,寮にいた男性2名が負傷した。
    ●5月5日,モスクワ市シェレメチェヴォ空港Eターミナルで警察官の服装をした数人の男がカザフスタンから到着した2名を銃器で脅し,400万ルーブルが入ったかばんを奪い車両で逃走した。被害者の1名が顔を負傷した。
       (4)【その他参考となる事案】
    ●4月4日夜,モスクワ市イサコフスコヴァ通りの住宅で宅配業者を狙った強盗事件が発生した。宅配業者がバラの花束を届けたところ,何者かに銃を突きつけられ,約10万円相当の花束3束を奪われた。犯人は花束を奪った後,車両で逃走した。(モスクワ市内では,宅配業者が指定場所に赴いた際に待ち伏せされ,襲撃されるという事件が多発している。)
    ●4月15日昼,モスクワ市セドヴァ通りで,交通トラブルをきっかけとした殺人事件が発生した。2台の車両の運転手が交通トラブルをきっかけに口論を始め,最終的に一方の運転手が相手方の運転手に向け,けん銃を7発発砲した。被害者はその場で死亡し,犯人は車両で逃走した。
    ●4月17日,モスクワ市警察当局は,「違法薬物を流通させていた犯罪組織の構成員12名を摘発した。また,この際に違法薬物1キログラムを押収した。」と発表した。この犯罪組織は,北カフカス連邦管区,CIS諸国,モスクワ市及び同市郊外出身の18歳から35歳で構成されており,各構成員の組織における役割が明確に決められていた。
    ●4月28日午前8時頃,モスクワ市ナロードナヴァ・オポルチェニヤ通り所在の日本料理店の店長から警察に対し,「朝出勤したところ,金庫の中から180万ルーブルが盗まれていた。」という通報があった。警察の捜査の結果,容疑者として44歳の男が逮捕された。容疑者は,違法薬物の販売,武器の違法取引及び強盗などの犯歴を持つ男であった。
    ●5月6日午後4時頃,モスクワ市オレホフスキー並木道において,女性警察官と自動車に乗った男性が口論になった。女性警察官は男性が乗っていた車両の中に引火性の液体を入れ,火をつけた。男性は,全身の90パーセントに及ぶやけどを負い,女性警察官は逮捕された。
    ●5月6日午後10時45分頃,モスクワ市ナロードナヴォ・オポルチェニヤ通りのアパートにおいて強姦・強盗事件が発生した。44歳の母親と15歳の息子が住むアパートで,呼び鈴が鳴ったため,母親が玄関を開けたところ,中央アジア系の男2名が銃を突きつけて,室内に押し入った。犯人らは息子を縛り上げ,母親を強姦した後,室内から携帯電話2台,iPad,ノートパソコン,金のアクセサリー及び現金10万ルーブルを奪って逃走した。
    ●5月22日,在ロシア・米国大使館は,モスクワ市クツゾフスキー大通りに所在するアパートで発生したガス爆発で同館職員が負傷したことを発表した。
    ●6月15日午前1時30分頃,在ロシア米国大使館の敷地内へ卵やトイレットペーパーが投げ入れられるという事件が発生した。犯人の若者4人は逃走を試みたが,その場で警察官に拘束された。
    ●6月15日,在ロシア・ウクライナ大使館前において,約200人が集まり抗議集会を実施した。参加者らは,「ロシア人ジャーナリストを解放しろ。」等のスローガンが書かれたプラカードを掲げたり,同スローガンを叫んだりした。
    ●6月16日朝,在ロシア・ウクライナ大使館において,政治団体『もう一つのロシア』の構成員4名は,同館敷地内へ発煙筒を投擲し,侵入を試みたが,その場で身柄を拘束された。同構成員4名は,6月14日に在ウクライナ・ロシア大使館前において発生した過激な抗議活動に反発し,本事件を起こしたとみられている。
    ●6月18日午後4時半頃,モスクワ市メシャンスキー警察に65歳の女性から詐欺被害にあった旨の通報があった。女性は,6月11日,モスクワ市ミーラ大通りにおいて外国の大手建設会社関係者を名乗る3人組から投資話を持ちかけられ,240万ルーブルを3人組に渡していた。6月18日,午後5時半頃,警察は犯人らの身柄を拘束した。犯人は,ロストフ州及びスタヴロポリ州の出身者であった。
    ●6月24日,モスクワ市警察は,ATMから約1,350万ルーブルを窃取しようとスキミング行為を行った者3名を検挙した。犯人らは,ノヴォコシンスカヤ通りにある銀行『モスクワ銀行』のATM2台に,キャッシュカードやクレジットカードなどの情報を不正に読み取るスキミング装置を設置した。設置から15時間後,犯人らは預金残高1,346万4,000ルーブルがあるキャッシュカードへのアクセス権を手に入れ,スキミング装置を取り外そうとしていたところ,警察に逮捕された。

     

  5.  テロ・爆弾事件発生状況
  6.    (1)邦人被害はなし。
       (2)外国人被害はなし。
       (3)テロ・爆弾事件発生事例
    ●4月3日,チェチェン共和国グロズヌイ郊外(約40km)の村で任務中の装甲車両が移動中に爆弾が爆発し,兵士4人が死亡し,7人が負傷する爆弾テロが発生した。
    ●4月21日,モスクワ市ナミョトキン通りにある銀行『ズベルバンク』の職員から警察に対し,「銀行内に不審なものが置かれている。」という通報があった。通報を受けた警察は,訓練を受けた職員及び爆発物探査犬を派遣し作業を行った。この間,同銀行にいた職員及び客全員が一時的に避難させられた。
    ●5月5日,「5月5日若しくは6日,モスクワ市プレネンスカヤ河岸通りにある商業施設『モスクワシティ』においてテロが発生する。」旨の通報があった。これに伴い同商業施設では,警備強化のために警察の特殊部隊や警察犬による検査が実施された。
    (モスクワシティにおいて,同種事案が頻繁に発生している。)
    ●5月25日,モスクワ市レニングラツキー街道にあるショッピングモール『メガ・ヒムキ』に爆弾を仕掛けたという匿名の電話があった。店舗側は警察に通報し,臨場した警察官及び爆発物探知犬により捜索が実施されたが爆発物は見つからなかった。なお,この事件において店舗内にいた客及び従業員が一時的に避難した。
    ●5月26日,警察に対し,「モスクワ市ペトロフカ通り2番地にある建物に爆発物が入った箱がある。」旨の匿名による電話があった。この電話を受け警察は,同住所地に所在する百貨店『ツム』内の検索を実施したが爆発物は確認されなかった。検索の際には,『ツム』の中にいた客及び従業員約200名が一時的に避難した。
    ●6月7日,モスクワ市プロフサユーズナヤ通りに駐車していた車両(メルセデス製)下から爆発物と思われる不審物が発見された。警察は発見された不審物を押収し,検査を行った。

     

  7.  誘拐・脅迫事件発生状況
  8.    特になし

     

  9.  日本企業の安全に関わる諸問題
  10.    日本企業に対するものではないが,領土問題に関して昨年以降当館に対する抗議活動が行われている。当館ばかりでなく,日系企業や団体,在留邦人,邦人旅行者についても注意が必要である。なお,昨年10月から外国人管理が厳格化されており,軽微な交通違反等であっても複数回違反した場合,入国禁止処分を受けることもあるので,法令違反には注意が必要である。                  

 

以上