安全情報

 

 

 

2014年1月~3月までの当地治安関連情報

 

  1. 治安・社会情勢(一般治安情勢,政治的安定度,反政府勢力の動き,対日感情の変化)
  2.  

    (1)一般国民による反体制抗議運動は,集会法の罰則強化やNPO外国エージェント法採択等の締め付け策により鎮静化しつつあるが,社会の不満は依然として解決されるには至っていないといわれている。2013年10月,コーカサス系住民によるスラブ系男性殺人事件に端を発し,モスクワ南部で民族間の緊張に伴う騒乱が発生した他,当局による取り締まりが強化され,多数の不法移民が摘発された。また,同年11月4日の民族統一の日には大規模な不法移民の取り締まり強化等を掲げる行進が行われるなど,民族間の緊張が高まっている。

     

    (2)ロシア国内では,現下のウクライナ情勢への政府の対応を支持する者が多数と報じられている。今後,ウクライナ東部の情勢の推移に対する米欧諸国の追加的な制裁措置が与える影響に注視していく必要がある。なお,3月5日,モスクワ市内において,ウクライナ情勢に関する反戦集会が開催され,50人が拘束されている(4月13日には,反政府集会も開催)。

     

    (3)ロシア国民の日本に対する感情は一般的には良好であるが,反面,北方領土問題などで民族主義者や各種団体が当館に抗議することもあり,複雑な側面がある。

     2013年6月19日,「もう一つのロシア」構成員を名乗る若者約10名が大使館前でビラ配布を行う等の抗議活動を展開し,4名が逮捕される事件が発生した。今後,同様の抗議活動が当館や日系関連団体・企業等に対して行われる懸念があり,警戒が必要である。なお,1月31日,モスクワ市トリウムファーリナヤ広場において,爆竹及び発煙筒を用いて騒ぎを起こした25名が警察に拘束され,この中には「もう一つのロシア」の指導者が含まれていたと報道された。

     

    (4)北コーカサスにおいては,引き続きテロが頻発している。2013年7月初旬,北コーカサス武装勢力の幹部であるドク・ウマロフと思われる人物が,ソチオリンピックの開催を阻止することを促す動画がカフカスセンターウェブサイトに掲載されて以降,テロが頻発するダゲスタン共和国に加えて,同年10月には,ボルゴグラードにて路線バスを標的とした自爆テロ事件,同年12月には,連続して鉄道駅及びトロリーバスを標的とした自爆テロが発生するとともに,スタヴロポリ地方ピャチゴルスクでも交通警察建物を狙った爆弾テロが発生した。

     4月,ロシア治安当局は,ドク・ウマロフの死亡を確認したと発表したが,これと前後して,北コーカサス武装勢力はウェブサイト上で新たなリーダーが出現したと発表するなど武装勢力側に変化が生じている。今後,新勢力によるプレゼンスを高めることを狙ったテロが発生する懸念もあり,引き続きテロに対する警戒が必要である。

     

     

  3. 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
  4.  

    (1)モスクワ市内務総局によると,2013年モスクワ市における犯罪件数は,約17万5千件で前年比2.9%減少しているが,依然として高水準で推移している。また,当地では外国人排斥を唱える民族主義者が多数存在しているといわれている。

     

    (2)【邦人被害】

    ●2月22日,五輪観戦中(スキー競技)に邦人旅行者が,バックの中に入れていた旅券とクレジットカードを盗まれた。

    ●3月12日,モスクワ市バリシャヤ・スパースカヤ通り付近(当館から南東方向)に駐車していた在留邦人の私用車のナンバープレートが盗まれる事件が発生した。

     

    (3)【邦人以外の外国人の被害】

    ●1月11日夕方,モスクワ市サヴィヨーロフスカヤ・リーニヤ通りにおいてベトナム人ビジネスマンが数人の男に襲われ,100万ルーブル以上の現金を奪われた。犯人らは,けん銃で被害者を脅し,所持していた現金48万ルーブル入りのかばん及び被害者の自宅の鍵を奪った。その後,犯人らは被害者の自宅へ行き,室内にあった現金60万ルーブルを奪って逃走した。

    ●1月16日午後11時頃,モスクワ市スホドネンスキー袋小路1番地にある建物の中庭でウズベキスタン人の遺体が発見された。この遺体にはナイフによる刺し傷が20箇所以上あったことから,事件の詳細について警察が捜査を行っている。

    ●3月17日,モスクワ市レオンチエフスキー横町18番地所在の在ロシア・ウクライナ大使館の敷地内に身元不明の5人が侵入しようとする事件が発生した。犯人らは,警戒中の警察官及び大使館職員に阻止され,身柄を拘束された。

    ●3月18日午後4時頃,モスクワ市レニングラツキー大通り沿いのペトロフスキー公園において,33歳の中国人の会社役員が3人組の男らに襲われ,現金約330万ルーブルが入ったかばんを奪われた。犯人らは,けん銃で被害者を脅しかばんを奪い逃走した。

    ●3月21日,モスクワ市クラスノダールスカヤ通りのショッピングセンターの駐車場でウズベキスタン人とタジキスタン人が銃で撃たれて病院に搬送された。被害者らは,駐車場内で不適切に車を止めていた運転手に注意したところ,いきなり銃で撃たれた由。

    ●3月22日午前4時40分頃,モスクワ市セリヤラドネジスカバ通りにおいて,マリオットホテルに泊まっている英国人男性が強盗の被害に遭った。犯人は,3人組の男で,スマートフォン(iPhone),銀行のキャッシュカード,英貨80ポンド及び4,000ル-ブルを奪って逃走した。同日5時頃,チースティプルーディ並木道において,警察官が犯行に及んだ3人組の身柄を確保した。

    ●3月24日昼間,モスクワ市サドーヴォヤ・クドリンスカヤ通り21番地付近に駐車していた在ロシア・キューバ大使館職員所有の車両から,2万1千ルーブル相当のカメラとリュックサックが盗まれた。

     

    (4)【その他参考となる事案】

    ●1月10日夜,モスクワ市内地下鉄ベラルースカヤ駅構内で集団による乱闘が発生した。当事者の何者かがけん銃を発砲し,3人が負傷,そのうち2人が入院した。

    ●1月12日夕方,モスクワ市クツーゾフスキー大通りに所在するショッピングセンター近くにおいて,交通トラブルを発端とする発砲事件が発生した。犯人は,けん銃を発砲 し,逃走した。この事件でけが人はいなかった。

    ●1月12日午後6時頃,モスクワ市ヴェルナツコヴォ大通り11番地所在の宝石店に4人組の男らが押し入り,総額600万ルーブル相当の貴金属類を奪った。宝石店の警備員が犯人らを取り押さえようとしたが,犯人らはけん銃を警備員に向け発砲し逃走した。警備員は,犯人らが発砲した銃弾を右腕と左足に受け負傷し,入院した。

    ●1月13日午後5時頃,モスクワ市バラトニコフスカヤ通りにおいて交通トラブルを発端とした発砲事件が発生した。運転していた男が,相手に向けてけん銃を発砲し逃走した。同日,午後7時頃,この事件が発生した現場から約22キロメートル離れた場所において,警察はけん銃を発砲した運転手を拘束し,銃器を押収した。

    ●1月16日,モスクワ市南部ザゴリエフスキー横町の植林地帯において強盗事件が発生した。4人の男が,被害者の男性に暴力を加えると脅し手錠をかけた上で,上着のポケットから現金42万ルーブルを奪って逃走した。この事件の約1時間後,警察は犯人の1人と思われるモルドヴァ共和国出身の33歳の男を逮捕した。

    ●1月17日夜,モスクワ市ガルヤノヴァ地区に駐車中の車両が放火された。同地区では,3日連続で放火による車両火災が発生している。

    ●1月23日未明,モスクワ市デカブリストフ通り17番地所在のナイトクラブで,酒に酔ったグループ同士によるけん銃及び鉄の棒を使用した乱闘事件が発生した。警察官が駆けつけた際には,けが人2名が倒れており,腹部銃創及び頭蓋骨骨折等の重傷により病院に搬送された。

    ●1月28日,警察はモスクワ市内においてアパートの高層階ばかりを狙って侵入窃盗を行っていた41歳の男を逮捕した。この男は,アパート高層階の住人が窓やバルコニーに鍵をかけないケースが多いことに目をつけ,アパートの壁や屋根をよじ登り建物の外側から侵入する手口で犯行を繰り返していた。

    ●1月31日,警察はモスクワ市内において,ピッキングなどの手口を用いて窃盗を行っていた容疑者らを逮捕した。検挙された者らは「モスクワの住居で用いられている鍵の形状は11種類である。その形状を研究し,訓練することにより12分間で解錠する技術を身につけることができた。」と述べており,犯行の際は,解錠,見張り,隣人宅の在宅確認及び運転手などの役割分担をし,窃盗行為に及んでいた。

    ●2月3日,モスクワ市内務総局は,モスクワ市内でタジキスタン生まれの22歳と23歳の男を強盗の容疑で逮捕したと発表。逮捕された2名は,1月27日午前7時30分頃,ヴェルフニエポリャ通りとプロエクチルエミー横町の交差点において,自動車を運転していた男性をけん銃で脅し,80万ルーブル相当の貨物を奪おうとしたが,運転手が激しく抵抗したため現場から逃走していた。

    ●2月10日午後5時40分頃,シェレメチェヴォ空港Cターミナル出口において3,000万ルーブルが奪われた。現金輸送業者が,免税店の売り上げの入ったかばんを持って,空港Cターミナルの出口に向かっていたところ,自動小銃で武装した2人組に襲われた。犯人らは,現金の入ったかばんを奪って付近に準備されていた車両に乗って逃走した。

    ●3月8日午後3時17分,モスクワ市シャボロフスカヤ通り24番地に位置する宝石店において強盗事件が発生した。覆面をした6人組の男らが,店内に押し入り,けん銃で店員を脅し,宝飾品を奪って逃走した。

     

  5. テロ・爆弾事件発生状況
  6.  

    (1)邦人被害はなし。

     

    (2)外国人被害はなし。

     

    (3)テロ・爆弾事件発生事例

    ●1月7日午後8時,モスクワの警察が,クールスキー駅に爆弾が仕掛けられているという不審な電話があり,警察官等を派遣し同駅の検索を実施したが,爆発物等は発見されなかった。

    ●1月12日午前5時頃,モスクワ市キエフスコエ街道上(モスクワ環状道路まで26キロメートルの地点)で,非番の警察官が何者かに銃撃された。警察官は,胸部に銃弾を受け入院した。犯人は,逃走しており,警察が行方を追っている。

    ●1月16日夜,ダゲスタン共和国マハチカラ市内のレストランにてグレネードランチャーを使用したとみられる2度の爆発があり,14人が負傷した。

    ●1月17日昼,モスクワ市リャビノヴァヤ通り所在の第61学校に対し,爆弾を仕掛けたという不審な電話があったため,警察は学生及び職員合わせて約400人を避難させ検索を行った。

    ●1月22日,ロシア当局は,モスクワ市内においてアルカイダのメンバーとみられるエジプト人を拘束したと発表した。同エジプト人は,ロシアへの亡命を求めていたが,連邦移民局の確認の結果,テロリスト集団の一員であることが明らかになった。

    ●2月3日昼,モスクワ市オトラードナヤ通り116番地に所在する第263学校において,自動小銃を持った学生が,学校内に立てこもる事件が発生した。同学生は,警備員を小銃で脅して学校内に侵入し,教室にいた教師に発砲し,同教師を殺害した。その後,同学生は,通報を受けて駆けつけた警察官に対しても発砲し,警察官1名に重傷を負わせ,1名を殺害した。同学生が所持していた小銃は,2丁であり,父親が合法的に所有するものであった。

    ●2月11日,モスクワ市北西部にあるモスクワ航空大学において,爆破予告があり,大学に通う学生や職員らが一時的に屋外に避難した。この事件のため,大学は終日閉鎖された。

    ●2月22日,サンクト発ムルマンスク行きの航空機内で男が暴れ,爆発物があると述べたため,ムルマンスク空港内で当局による検索が行われたが,爆発物は発見されなかった。

    ●2月24日,モスクワ市プレネンスカヤ河岸通りに所在する商業施設アフィモール・シティに対して爆破予告があった。

    ●3月3日午後0時30分頃,モスクワ市北部にあるショッピングモール・メトロポリスに爆破予告の電話があった。警察等により,店舗内の検索を実施したが,爆発物は見つからず,夕方頃に同ショッピングモールの営業が再開された。

    ●3月20日昼,モスクワ市中心部のイリインカ通りにあるロシア連邦商工会議所に爆弾を仕掛けたという電話が警察に入った。この電話を受け,警察は同建物内の職員らを避難させ,検索を行ったが爆発物等は見つからなかった。

    ●3月26日,警察にモスクワ市ボリシャヤ・トゥリスカヤ通り13番地にあるショッピングモール『エレヴァン・プラザ』に爆発物を仕掛けたという匿名のメッセージが寄せられた。このメッセージを受け,警察が同ショッピングモール内の検索を実施したが,爆発物は見つからなかった。検索の際に,ショッピングモールの職員及び客ら数千人が一時的に屋外へ避難した。

     モスクワでは,同種事案が頻繁に発生している。

     

  7. 誘拐・脅迫事件発生状況
  8.  

    ●3月5日10時39分頃,モスクワ市コツロブカ地区を担当する警察署に女性から「知人の女性が買い物に出たまま帰宅していない。その後,不審な男から電話があり,知人の女性を誘拐している。解放してほしければ6万ルーブルを渡すようにと要求された。」という通報があった。この通報を受け,警察は捜査を行い,モスクワ市ナゴルナヤ通り15番地付近において犯人と思われる2名を逮捕した。

     

  9. 日本企業の安全に関わる諸問題
  10.  

     日本企業に対するものではないが,北方領土問題の交渉再開合意に伴い,昨年以降当館に対する抗議活動が行われており,今後の情勢次第ではさらに激化する懸念があり,当館ばかりでなく,日系企業や団体,在留邦人,邦人旅行者個人についても各自で警戒していく必要がある。

                        

 

以上