安全情報

 

 

 

 

 

2013年7月~9月までの当地治安関連情報

 

  1.  治安・社会情勢(一般治安情勢,政治的安定度,反政府勢力の動き,対日感情の変化)
    (1)2011年12月の国家院選挙に続き,2012年3月大統領選挙が実施され,同年5月にプーチン首相が大統領に復帰,メドヴェージェフ大統領が首相に就任した。2011年12月以降,不正投票が行われたとして,大規模な反体制抗議運動が起こり,大統領就任式前日には集会参加者と治安維持当局との小競り合いが発生,その後集会法の罰則強化やNPO外国エージェント法採択等の締め付けを行い,抗議運動は鎮静化されつつあるが,社会の不満は依然として解決されるには至っていないといわれている。本年7月に,モスクワ市長選挙の候補者(落選)であったナヴァリヌイ氏支持者が集会を行い,モスクワやサンクトペテルブルクで数十名が拘束された。なお,9月8日のモスクワ市長選前後には特段の混乱は起きなった。
    (2)ロシア国民の日本に対する感情は一般的には良好であるが,反面,北方領土問題などで民族主義者や各種団体が当館に抗議することもあり,複雑な側面がある。6月19日,「もう一つのロシア」構成員を名乗る若者約10名が大使館前でビラ配布を行う等の抗議活動を展開し,4名が逮捕される事件が発生した。本件は,翌20日のサンクトペテルブルクにおける松山外務副大臣とモルグロフ外務次官との会談を前にして実施された。今後,同様の抗議活動が当館や日系関連団体・企業等に対して行われる懸念があり,警戒が必要である。
    (3)北コーカサスにおいては,引き続きテロが頻発している。特に,7月初旬,北コーカサス武装勢力の幹部であるドク・ウマロフと思われる人物がカフカスセンターウェブサイトにて,ソチオリンピックの開催を阻止することを促す動画が掲載された以降,テロが頻発するダゲスタン共和国に加えて,チェチェン,イングーシ,カバルダ・バルカル共和国において相次いで自爆テロや襲撃事件が発生しており,警戒が必要である。
  2.  

  3.  一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
    (1)モスクワ市内務総局によると,2012年モスクワ市における犯罪件数は,約18万件で前年比3.8%増加しており,うち凶悪事件件数は,殺人が447件,強盗が2880件と依然として高水準で推移している。当地では外国人排斥を唱える民族主義者が多数存在しているといわれている。ソバ・センター(当国における信頼度の高い人権団体として評価され度々引用されるNGO組織)によれば,2013年9月までに,人種差別に基づく暴力行為により17人が死亡,115人が負傷したとされている。また,人種差別や排外主義者による非スラブ人に対する公共交通機関での暴行事件などが散見されるとしている。
    (2)【邦人被害】
    ●7月4日22時頃,在留邦人がモスクワ市プロトポポフスキー横町所在のスーパーマーケットにおいて買物を終え外へ出ようとしたところ,出入口付近にロシア人と思われる男1人が進路をふさぐようにして立ち,その隙に後方からロシア人と思われる男2人が近づき体を密着させてきた。屋外へ出た後,邦人は,肩からたすき掛けにしていたショルダーバッグのファスナーが開けられ,中から財布を抜き取られていたことに気付いた。
    ●7月6日深夜3時頃,邦人旅行者がマリ・エル共和国のイオシュカル・オラ駅4時10分発カザン行きの列車に乗車するためタクシーを利用して駅に移動,降車の際にこのタクシーが故意に邦人旅行者を轢き,はね飛ばされた隙に(何者かにより)スーツケース2個が盗まれた(現金,時計,衣服等在中,わき腹と頭部を負傷)。
    ●7月9日15時頃,モスクワ市第1トベルスカヤ・ヤムスカヤ通り路上において,在留邦人が銀行へ行くため歩道上で立ったままスマートフォン(アップル社製・iPhone4S)の地図ソフトを使用して経路を検索中,被害者の前に立ち止まったロシア人と思われる男に,把持していたスマートフォンを奪取された。
    ●8月6日15時から21時の間,在留邦人がモスクワ市ジートナヤ通り付近路上に私有車を駐車していたところ,車上ねらいの被害にあった。後部ドア窓ガラスが割られており,後部座席上に置いていた一眼レフカメラが盗難された。
    ●8月13日,在留邦人がモスクワ郊外のウリヤノフスク森林公園内の売店で支払いのため,財布を取り出そうとリュックのチャックを開けていたところを狙われ,中にあった旅券ケース(旅券,ロシア居住許可,現金5千ルーブル在中)を盗難された。
    ●8月18日16時頃,ベラルースカヤ駅アエロエクスプレス切符売り場でカバンから財布を取り出そうとしたところ,カバンのチャックが気づかないうちに開けられ,中に入れてあった財布兼貴重品入れ(現金8万円,4千ルーブル,クレジットカード,旅券在中)を盗難されていた。
    ●8月25日13時から15時の間,在留邦人が,モスクワ州ヒムキ市8番通り所在の「イケア」駐車場内に私有車を駐車していたところ,助手席の窓ガラスが割られ,車上荒らしの被害にあったが,車内から盗まれたものはなかった。 
    ●8月28日,邦人旅行者が地下鉄環状線に乗車し,クルスカヤ駅で下車しようとした際に,車両内で二人の男(スラブ系)が進路をふさいできたため,振り払って下車したところ,たすき掛けしていたバック内の財布が盗難されていた。
    ●9月3日,在留邦人が,モスクワ市内の日本食レストランのトイレ近くのソファシートに座って同僚と食事していたところ,知らない間にソファの下に置いていたバックを何者かに置き引きされた。その後,警察に被害届を提出し,防犯カメラを確認したところ,二人のロシア人が携帯電話で連携しながらバックを盗難していた映像が記録されていた。
    ●9月13日18時頃,在留邦人が,社用車にて移動中,モスクワ市内北西部Kuushieha通りのスーパーマーケット前にドライバーを残して下車したところ,車後方からスクーターがぶつかり,ドライバーが車から降車してスクーターの方へ向かっている間に,何者かが運転席のドアを開け,後部座席に置いてあったカバンを持ち去った。スクーターの運転手も素早く立ち上がり「怪我はない」と言い走り去った。盗られたカバンは近くに捨てられていたが,現金,クレジットカード,パソコン,携帯電話が抜き盗られていた。
    (3)【邦人以外の外国人の被害】
    ●7月31日,モスクワ警察は,外国人犯罪グループを摘発するため,警察官900人以上を動員し不法滞在等の疑いがある外国人約1,400人を拘束したと発表した。発表によると,モスクワ市イルティシュ警察はベトナム人約1,200人を逮捕し,モスクワ市内に20以上の地下施設があることを明らかにした。また,サヴィエトスコイ通りにおいても,不法滞在等の疑いにより200人以上の外国人が逮捕された。同人らの中には,エジプト,モロッコ,シリア,ウズベキスタン及びアゼルバイジャンからの移民が含まれており,パスポートを偽造するとともに,銃器等の武器類を不法に所持していた。
    ●8月3日18時30分頃,モスクワ市リャビバノヤ通り8番地付近において,コーカサス地方出身者とみられる男が,トルコ人映画ディレクターを襲い,現金約50万ルーブル,携帯電話及び書類が入ったカバンを奪って逃走した。
    ●8月21日,モスクワ市ボルゴグラード通りにおいて,渋滞の車列の中に立っていた男4人が,中国人の乗っていた車両に発砲し,現金1,600万ルーブルを奪って逃走した。犯人の4人は,ドモジェドボ空港において飛行機に搭乗する直前で逮捕された。犯人はタジキスタン国籍の4人であった。
    ●8月23日,ロシア内務省は,「モスクワ州を中心に高級車を対象にした窃盗団を逮捕した」旨発表。この発表によると,同窃盗団は,盗難防止装置を無効にする手製の機械とマスターキーを使用し数百万ルーブル以上の高級車を対象としてこれまでに30台を盗んでいた。窃盗団の構成は,37歳から48歳のグルジア人で住所不定の者等であった。
    ●8月25日,モスクワ市中央通り5番に所在するカフェにおいて,トルコ人5人がけんかに巻き込まれた。このうち2人はそれぞれ腹と胸をナイフで刺されて入院し,1人は腕を負傷した。犯人はその場で拘束された。
    ●8月30日,警察はモスクワ市バタニーチェスカヤ通りにあるレストランにおいて,バットやナイフを所持していたキルギス人23人を拘束し,警察署へ連行した。身分確認の結果,同人らは,不法滞在者であることが判明した。
    ●9月7日9時頃,アンゴラ人が,モスクワ市スマレンスカヤ広場6番地付近に駐車していた車両のトランクルームから私的な文書が入ったブリーフケースを盗まれる車上荒らし被害にあった。
    ●9月11日夜,モスクワ市ルミャンツェヴォ地区所在の市場「スラブスキーミール」において,移民同士による銃器を使用した抗争事件が発生。この事件で25歳のタジキスタン人男性が銃で撃たれて死亡した。
    ●9月22日,モスクワ市レニングラツキー大通り路上において殺人事件が発生。走行中の車の前で別の車が急停止し,この車から出てきた2人組の男が別の車の運転手及び乗員をバットで殴打した。その結果,1人が死亡,1人が重体で病院へ運ばれた。事件発生から数時間後,容疑者として27歳と24歳のモルドバ人男が逮捕された。警察は事件の全容について捜査中である。同日、モスクワ市レニングラード大通りにおいて、2台の乗用車間で交通上のトラブルが発生。一方に乗車していた3人が、携帯していた野球用のバットで相手方の2人を殴打、1人が死亡、1人が重傷を負った。
    【最近,ロシア国内において、交通上のトラブルに備え凶器として車内にバットを置くことが常態化しており、また、バットを使用した凶悪犯罪が頻発していることから、バットの所持に関して法規制の動きがある。】
  4.  

  5.  テロ・爆弾事件発生状況
    (1)邦人被害はなし。
    (2)外国人被害はなし。
    (3)テロ・爆弾事件発生事例
    ●7月1日夜,モスクワ市の地下鉄セミョーノフスカヤ駅に停車していた地下鉄の先頭車両で所有者のいない不審な段ボールが発見された。爆発物探知犬等を使って箱を調べた結果,火薬等の爆発物は見つからなかった。なお,この事件において安全対策上の観点から,乗客に対して車両への出入り制限がなされた。
    ●7月9日,ダゲスタン共和国マハチカラ市近郊で,ジャーナリストが銃撃を受けて,その場で死亡した。
    ●7月9日深夜,モスクワ市ナバザボーツカヤ通りにおいて,青年組織「Тризна(トゥリズナ)」の指導者アレクセイ・クラブチェンコが拘束された。同人の車両からは銃弾50発,自宅からは爆発物5キログラムが発見された。
    ●7月15日,カバルダ・バルカル共和国のテレク地区で警察官が襲撃され,銃撃戦となり,武装集団1名が射殺された。
    ●7月17日夜,モスクワ市クルジジャノフスカヤ通り20/30番地所在の研究施設の警備員が不審物を発見。同研究施設において,警察が検索等を行った結果,不審物はTNT(トリニトロトルエン)火薬及び起爆装置であった。
    ●7月25日朝2時頃,モスクワ州ナガチナ・サドーブヌキ地区在住の男性が,自分の車両の下に不審物が置かれているのを発見。捜査の結果,この不審物は,TNT(トリニトロトルエン)火薬及び雷管からなる即席の爆発物であることが判明した。
    ●8月4日,ダゲスタン共和国マハチカラ市の中心部で24時間営業の商店で爆発物が爆破し,9人が負傷し,その1時間後に同市の別の商店で小規模な爆発(負傷者なし)が発生した。
    ●8月11日,モスクワ市北部において模造簡易爆弾が発見された。市民からの通報により警察が検索をした結果,金属製のスーツケースを発見し,解体処理した。同爆弾は,円筒状の爆発物7個,タイマー2個,バッテリー2個及び電気回路から構成されていた。
    ●8月27日,イングーシ共和国マルゴベク地区で,同国治安協議会事務局長が襲撃され,運転手とともに殺害された。
    ●9月16日,チェチェン共和国のスンジャ地区の警察署に自動車が突入を試み,仕掛けられた爆発物が爆破する自爆テロ(警察官3名死亡,5人負傷)が発生した。
    ●9月16日,イングーシ共和国で自爆テロ未遂事件(銃撃戦の末,警察官1名死亡,1名負傷,不審者も死亡)が発生した。
    ●9月17日,モスクワ市内のショッピングモール「ザラトイ・バビロン」に爆弾を仕掛けたとの匿名電話があった。電話では,爆弾を仕掛けた店舗を特定していなかったため,市内にあるショッピングモール3店舗が検索の対象となり,15,000人が避難した。検索の結果,爆発物は発見されなかった。
    ●9月23日,ダゲスタン共和国のフチニ村の警察署近くで自爆テロ(警察官等3人が死亡,12人が負傷(民間人2人含む))が発生した。
    ●9月25日,ダゲスタン共和国マハチカラ市内で同共和国最高裁判所の判事とその息子が乗った乗用車が襲撃され,二人は死亡した。
    (4)現在,内務省等は,モスクワ市内の集合住宅などで大規模な移民摘発やNPO団体への捜査等を強化している。また,大規模交通事故が頻発しており,注意が必要である。
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  7.  誘拐・脅迫事件発生状況
    特になし。
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  9.  日本企業の安全に関わる諸問題
    日本企業に対するものではないが,北方領土問題の交渉再開合意に伴い,当館に対する抗議活動が行われており,今後の情勢次第ではさらに激化する懸念があり,当館ばかりでなく,日系企業や団体,在留邦人,邦人旅行者個人についても各自で警戒していく必要がある。
  10.  

    以上