領事情報

   

 

モスクワ安全対策情報 (2014年10月~12月)

 

2014年10月~12月までの当地治安関連情報

 

  1. 治安・社会情勢(一般治安情勢,政治的安定度,反政府勢力の動き,対日感情の変化)
  2.  

    1. 一般治安情勢

      一般国民による反体制抗議運動は,集会法の罰則強化やNPO外国エージェント法採択等により鎮静化しつつあるが,社会の不満は依然として解決されるには至っていない。2013年10月,コーカサス系住民によるスラブ系男性殺人事件に端を発し,民族間の緊張が高まりモスクワ南部で騒乱が発生した他,その後も当局による不法移民取り締まりが強化された。なお,モスクワ市内では,ウクライナ情勢に関する反戦集会や反政権活動家であるナヴァリヌイ兄弟の第一審判決に対する抗議集会等が断続的に開催されている。

       

    2. 政治的安定度

      ロシア内務省の発表によれば,2014年の犯罪件数は全体では減少しているものの,テロ的性質をはらんだ犯罪や過激主義による犯罪,外国人を対象とした犯罪等は増加している。

      現下のウクライナ情勢を受けて,ロシア国内の治安が悪化する兆候は現時点ではない。他方,ルーブルの下落により物価が上昇し,市民生活にも影響が出て来ている。今後景気後退による一般犯罪の増加や愛国主義の高揚による排外的機運の高まり等に注意していく必要がある。

       

    3. 反政府勢力の動き

      不安定な北コーカサス情勢を背景にしたテロが引き続き頻発している。昨年10月5日にチェチェン共和国グロズヌイ市内の劇場にて自爆テロ事件が発生した他,12月4日には同市で武装勢力が警察詰め所を襲撃し,出版会館,学校等に立てこもるテロ襲撃事件が発生し,多数の死傷者がでた。ロシア国内でテロ事件を起こした北コーカサス武装勢力に新たなリーダーが指名されるなど2014年には,武装勢力側に変化が生じている。

      また,イラクやシリアで活動しているテロ組織ISILにはロシアからも多数のチェチェン系ロシア人等が参加しているといわれており,これらの帰還者によるロシア国内でのテロの懸念が生じている。今後,北コーカサスの武装勢力がプレゼンスを示すことを狙ったテロや,シリア等での戦闘経験を有する帰還者によるテロが発生する懸念もあり,引き続き警戒が必要である。

       

    4. 対日感情

      ロシア国民の対日感情は一般的には良好であるが,過去に北方領土問題などで民族主義者や各種団体が当館に抗議を行ったこともあり,複雑な側面がある。今後,同様の抗議活動が当館や日本関連団体・企業等に対して行われる懸念があり,警戒が必要である。

       

  3. 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向

     

    1. ロシア内務省は,2014年のロシア連邦内の犯罪情勢について次のとおり発表した。

      (ア)全犯罪の登録件数は,216万6400件(前年比-1.8パーセント)であり,この内172万8600件(前年比-1.9パーセント)が刑事事件として提起された。

      (イ)上記登録犯罪における摘発率は,88.9パーセント(前年比-0.1パーセント)であった。

      (ウ)各種犯罪の件数が減少する中,環境犯罪(廃棄物処理,資源・鳥獣・森林保護等に関する犯罪)の登録数(2万5530件・昨年比+3.2パーセント),麻薬取引関連犯罪摘発数(25万3500件・昨年比+9.5パーセント),テロ的性質をはらんだ犯罪登録数(1127件・前年比+70.5パーセント),過激主義による犯罪登録数(1024件・前年比+14.3パーセント)が増加傾向を示した。また,外国人及び無国籍者を対象とした犯罪件数も1万4000件となり,前年比6.1パーセント増加した。

      2014年に発生した,武器が用いられた犯罪は7200件で前年比4.6パーセント減少した。モスクワ市においては,359件の武器を用いた犯罪が発生している。ロシアでは銃器の入手が容易であり,日常的なトラブルにも銃器が持ち出されることもあり,注意を要する。

    2.  

    3. 【邦人被害】

      ●11月22日夕,在留邦人がモスクワ市内の大型ショッピングセンター内のスーパーマーケットで買い物をして帰宅していたところ,肩からたすき掛けにしていたショルダーバッグの中に入れておいた財布を何者かに窃取された。

      ●12月4日夕,邦人出張者が,モスクワ市内のレストランで会食中,席に置いていた旅券を含むバックを置き引きされた。

      ●12月13日深夜,モスクワ市イズマイロフ地区周辺において,無許可のタクシーの運転手及び同乗していた者が,客として乗っていた在留邦人の所持してたパスポート及び現金を強奪した。

      ●12月28日深夜,在留邦人が仕事を終えてモスクワ市クルスカヤ駅近くの自宅に帰宅したところ,自宅アパートの部屋に何者かが侵入し,パソコン,カメラ等の貴重品を盗まれる空き巣被害にあった。

      ●12月29日,邦人留学生がニジニノブゴロドにてバスで大学に通学途中,何者かにリュックサックの底を刃物で切られ,中に入っていた財布,旅券,書類等が盗難被害にあった。

      ●12月29日,邦人旅行者が,シェレメチェボ空港ターミナルDに到着し,税関検査を通過したところで,国内線に乗り継ごうと(同じターミナル)したところ,男に乗り継ぎにはタクシーに乗る必要があるといわれて,タクシーに案内され,料金は6,000ルーブルといわれた。別のタクシーに乗車したところ2,000ルーブルを請求され,支払わされる被害にあった。

      (注:シェレメチェボ空港では流しのタクシーによる高額な料金請求が増加しており,また,モスクワ市内でも無許可タクシーの運転手による現金強奪事件が発生しているので,タクシーを利用する際は信頼できる正規のタクシーを利用する等の対応が必要)

    4.  

    5. 【外国人被害】

      ●10月9日,モスクワ市内の両替所で,イタリア人が1200万ルーブルを外貨に両替しようとしたところ,男が近づいてきて,有利なレートで交換できると話を持ちかけた。被害者が現金を手渡すと,男はその場から立ち去り戻ってこなかった。

      (注:モスクワ市内では,昨夏30以上の違法両替グループが摘発された。このような両替詐欺や違法両替グループは,主に中東系の外国人犯罪組織が行っているといわれており,当局の許可を得ず違法に営業する両替店は,主にターミナル駅等の繁華な場所にあり,正規の両替商との見分けがつかないので注意が必要である。)

      ●10月15日昼,モスクワ市ブティルスカヤ通りにおいて,中国国籍の夫婦が銃を持った者に襲われた。被害者の男性は銃把で頭部を殴られ120万ルーブルの入ったかばんを奪われ,その妻も所持していたかばんを奪われた。

      ●11月5日,モスクワ市地下鉄警察職員の巡査部長が強姦の容疑で解雇された。この容疑者は,11月4日午前8時頃,地下鉄「アカデミカ・ヤンゲリ」駅構内で移民法違反の容疑でキルギス出身の女性の身柄を拘束し性的な関係を強要し,さらに女性が所持していた現金800ルーブルを奪った。

      ●11月18日,モスクワ市ボリシャヤ・ニキツカヤ通り付近において,外国人が殴打される事件が発生した。犯人は,31歳のブリャンスク市出身者であった。

      ●11月21日,モスクワ市北部チェルミャンカ川周辺の小屋でホームレスの遺体が発見された。その小屋から20メートルほど離れたところアジア系の男が刺殺されているのがが発見された。両者の関係は不明なるも,アジア系男性の遺体は死後2か月以上が経過していた。

      ●11月21日夜,モスクワ市ワルシャフスコエ街道85番地の建物入口付近で,8人の男が3人のインド人をおそった。被害者の1人は,殴られた後に現金数千ルーブルと総額10万ルーブル以上の貴重品(金の装飾品、携帯電話2台、ジャケット)を奪われた。

    6.  

    7. 【その他参考となる事案】

      ●10月18日,モスクワ市北東区警察は,不法移民に対する一斉取締を行い,455人の不法移民を拘束した。拘束された移民は,CIS諸国やベラルーシ出身者であった。

      ●10月23日,モスクワ市南西区警察は,同区交通警察と協力して,運送業者に対する不法移民掃討作戦を実施した。この結果,無許可タクシー行為を行っていた中央アジアおよびモルドバ出身の移民9人を拘束した。捜査の結果,これらの移民は違法にロシア国内に滞在していることが判明した。

      ●10月24日,モスクワ市警察は,一晩で6,830人の移民を拘束した。これらの者は,不法滞在やその他の犯罪を犯しているかどうか調べられるために拘束されたもので,このうち535人が不法滞在者であった。

      ●10月27日,iPhone6に絡んだ大規模な詐欺の被害者50人から警察へモスクワ市プレスネンスキー地区に所在する携帯電話販売店にiPhone6の前払い金を支払ったにもかかわらず,商品が引き渡されなかったとの通報があった。この詐欺の実際の被害者数はさらに多いと見られる。

      ●11月13日昼,モスクワ市レオンチェフスカヤに位置する在ロシア・ウクライナ大使館前で,若い女性がウクライナ政府に対し軍事行動停止を求めるポスターを掲げた後,同大使館の柵で首つり自殺を試みた。この人物は,警察に身柄を拘束され,病院へ搬送された。

      ●11月10日から12日までの間,モスクワ市東区警察は,無許可でタクシーの営業を行っていた10人のドライバーを摘発した。このドライバーは、32歳から45歳の中央アジア出身者であった。

      ●11月10日,モスクワ市内の大気中の硫化水素濃度が通常より高い数値を示し,報道では石油精製プラントが発生源とみられるとしていた。

      ●11月20日,モスクワ市地下鉄レーニンスキ-・プロスペクト駅構内に停車していた車両内で,男2人が喧嘩を始め,一方が相手の顔に向かって護身用拳銃を発砲した。警察は,発砲した北カフカス連邦管区出身の21歳男の身柄を拘束した。

      ●11月21日早朝,モスクワ中心部で10台以上の高級車を狙った放火事件が発生した。被害総額は300万ドル以上に上る。出火原因を消防局の専門家が調査することになるが,既に放火の証拠が明らかになっている。

      ●12月14日,モスクワ市ジュジノ地区及び北ブトボ地区において,無許可でタクシーの営業を行っていた外国人10人が摘発された。彼らは,南コーカサス地域,東欧,中央アジア地域出身者であった。行政的違法行為として調書が作成され,3台の自動車が押収された。

      ●12月20日から22日にかけて,モスクワ市東区警察は,無許可でタクシーの営業を行っていた運転手13人を拘束した。これらの運転手は,全員が中央アジア出身者であった。

    8.  

  4. テロ・爆弾事件発生状況

    (1)邦人被害はなし。

    (2)外国人被害はなし。

    (3)テロ・爆弾事件発生事例

    ●10月5日,チェチェン共和国グロズヌィ市の劇場入り口付近で自爆テロ事件が発生し,警察官が5人死亡,12人負傷した。

    ●10月12日午前5時頃,警察に「在ロシア米国大使館の敷地内に爆発物が設置されている」との通報があった。捜索の結果不審物は見つからず,この通報が虚偽であることが判明した。本件に関連して,警察は49歳のモスクワ在住の男性を拘束した。

    ●10月13日午後9時ころ,モスクワ市ニージニエ・ポーリャ通り20番に位置する自動車用道路の予算に関連する国家機関(高速道路関係機関)が入居しているビルの敷地内で,導線や時計等で構成された不審物が見つかった。特殊部隊や爆発物探知犬による検査の結果,発見された不審物は相当な規模の爆発物であることが判明した。

    ●10月20日午後0時30分ころ,警察に「クルスキー鉄道駅に爆発物を仕掛けた。」との電話があった。現場には警察や非常事態省の部隊が出動し,爆発物処理部隊や探知犬が構内全域を捜索したが,爆発物は発見されなかった。この電話のため,駅構内から約1,200人が避難し,多数の列車の運行が乱れた。

    ●10月24日,レニングラーツキー鉄道駅に爆弾を仕掛けたとの脅迫電話があったため、同駅から650人が避難した。その後,捜索が行われたが,爆発物は発見されなかった。

    ●11月3日,「モスクワ市ユジノパルトーバヤ通りに位置する建物に爆発物が仕掛けられている」との通報があった。当局がこの建物や周辺を捜索したものの,爆発物は確認されなかった。5日,当局はこの建物に入居する期間に勤務する55歳の男を虚偽通報の容疑で拘束した。通報時,この男は酒に酔った状態であったことが判明した。

    ●11月24日午後4時,「モスクワ市地下鉄ソコリニチェスカヤ線のルビャンカ駅において爆発が起こる」旨の通報があり,直ちに警察や救助隊,爆発物探知犬などが捜索等を行った。この事件において爆発物は確認されず,この通報は虚偽と判明した。

    ●12月4日,チェチェン共和国グロズヌィ市内において武装集団が,交通警察詰め所を襲撃し,その後印刷会館,学校等に立てこもり,最終的には当局によって鎮圧された。この事件では死傷者が多数出た。

  5.  

  6. 誘拐・脅迫事件発生状況

    特筆すべき事件なし。

  7.  

  8. 日本企業の安全に関わる諸問題

     

    1. 日本企業に対するものではないが,時折,当館に対して領土問題に関する抗議活動が行われることがある。領土問題については,日系企業や団体,在留邦人,邦人旅行者であっても言動等に注意が必要である。
    2. 近年,ロシアでは外国人管理が厳格化されており,軽微な交通違反等であっても複数回違反した場合,入国禁止処分を受けることもあるので,法令違反には注意が必要である。

 

 

以上