領事情報

   

 

安全上のお知らせ
(2015年1月~3月までの当地治安関連情報)

 

  1. 治安・社会情勢(一般治安情勢,政治的安定度,反政府勢力の動き,対日感情の変化)
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    1. 一般治安情勢

      ロシア内務省の発表によれば,2014年の犯罪件数は全体では減少しているものの,テロ的性質をはらんだ犯罪や過激主義による犯罪,外国人を対象とした犯罪等は増加している。ルーブルの下落により物価が上昇し,市民生活にも影響が出てきている。今後景気後退による一般犯罪の増加や愛国主義の高揚による排外的機運の高まり等に注意していく必要がある。

       

    2. 政治的安定度

      一般国民による反体制抗議運動は,集会法の罰則強化やNPO外国エージェント法採択等により鎮静化しつつあるが,社会の不満は依然として解決されるには至っていない。2013年10月,コーカサス系住民によるスラブ系男性殺人事件に端を発し,民族間の緊張が高まりモスクワ南部で騒乱が発生した他,その後も当局による不法移民,無許可タクシー等の取り締まりが強化され,モスクワ市内で2月16日から3月6日まで大規模な犯罪摘発作戦が行われた。なお,ウクライナ情勢に関する反戦集会や反政権活動家であるナヴァリヌイ兄弟の第一審判決に対する抗議集会がモスクワ市内で断続的に開催されている。また,2月27日深夜に元第一副首相で現ロシア共和党ー国民自由党の共同党首であったネムツォフ氏が殺害される事件が発生し,3月1日に予定されていた大規模な反体制派による集会がネムツォフ氏の追悼集会に変更となった他,5月上旬には反体制派による集会が予定されている。

       

    3. 反政府勢力の動き

      不安定な北コーカサス情勢を背景にしたテロが引き続き頻発している。昨年10月5日にチェチェン共和国グロズヌイ市内の劇場にて自爆テロ事件が発生した他,12月4日には同市で武装勢力が警察詰め所を襲撃し,出版会館,学校等に立てこもるテロ襲撃事件が発生し,多数の死傷者がでた。ロシア国内でテロ事件を起こした北コーカサス武装勢力に新たなリーダーが指名されるなど2014年には,武装勢力側に変化が生じている。

      また,イラクやシリアで活動しているテロ組織ISILにはロシアからも多数のチェチェン系ロシア人等が参加しているといわれており,これらの帰還者によるロシア国内でのテロの懸念が生じている。今後,北コーカサスの武装勢力がプレゼンスを示すことを狙ったテロや,シリア等での戦闘経験を有する帰還者によるテロが発生する懸念もあり,引き続き警戒が必要である。

       

    4. 対日感情

      ロシア国民の対日感情は一般的には良好であるが,過去に北方領土問題などで民族主義者や各種団体が当館に抗議を行ったこともあり,複雑な側面がある。今後,同様の抗議活動が当館や日本関連団体・企業等に対して行われる懸念があり,警戒が必要である。

      なお,2月7日,ロシア自由民主党が,北方領土に関連して当館前で抗議活動を行った。また,2月13日,動物保護団体がイルカ漁に反対するため当館前で抗議活動を行った。

       

  3. 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向

     

    1. ロシア内務省は,2014年のロシア連邦内の犯罪情勢について次のとおり発表した。

      (ア)全犯罪の登録件数は,216万6400件(前年比-1.8パーセント)であり,この内172万8600件(前年比-1.9パーセント)が刑事事件として提起された。

      (イ)上記登録犯罪における摘発率は,88.9パーセント(前年比-0.1パーセント)であった。

      (ウ)各種犯罪の件数が減少する中,環境犯罪(廃棄物処理,資源・鳥獣・森林保護等に関する犯罪)の登録数(2万5530件・昨年比+3.2パーセント),麻薬取引関連犯罪摘発数(25万3500件・昨年比+9.5パーセント),テロ的性質をはらんだ犯罪登録数(1127件・前年比+70.5パーセント),過激主義による犯罪登録数(1024件・前年比+14.3パーセント)が増加傾向を示した。また,外国人及び無国籍者を対象とした犯罪件数も1万4000件となり,前年比6.1パーセント増加した。

      2014年に発生した,武器が用いられた犯罪は7200件で前年比4.6パーセント減少した。モスクワ市においては,359件の武器を用いた犯罪が発生している。ロシアでは銃器の入手が容易であり,日常的なトラブルにも銃器が持ち出されることもあり,注意を要する。

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    3. 2014年に発生した,武器が用いられた犯罪は7200件で前年比4.6パーセント減少した。モスクワ市においては,359件の武器を用いた犯罪が発生している。ロシアでは銃器の入手が容易であり,日常的なトラブルにも銃器が持ち出されることもあり,注意を要する。
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    5. 【邦人一般犯罪被害】

      ●1月5日,在留邦人が,荷物を玄関に置いたまま就寝したところ,玄関ドアが開けられていてバックが盗まれていることに翌朝気づいた。

      ●1月9日,在留邦人が,自宅からショッピングモールに向かう途中,バック内の財布をすられた。

      ●1月9日,邦人旅行者が,パルチザン駅からイズマイロボマーケットに移動途中に財布をすられ,クレジットカードを不正利用された。

      ●2月13日,邦人旅行者が,ウラジオストク発モスクワ行きのシベリア鉄道に乗車し,2日目の朝,車両内で就寝中に携帯電話(スマートフォン)を盗まれた。なお,前夜同じコンパートメントに乗車していたロシア人女性が,翌朝知らない間に降車していた。

      ●2月22日,在留邦人が,スポーツ大会の会場に行く途中,交差点で信号待ちをしていたところ,警察官3名から職務質問を受け,旅券を提示したところ,到着通知の半券を所持していないとして警察署へ連行を求められた。

      ●3月23日夕,在留邦人がモスクワ郊外を列車で移動中,スラブ系の3人組にいきなり殴られた。

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    7. 【外国人一般犯罪被害】

      ●1月11日,ナイトクラブで知り合った外国人のアパートへ行き,薬剤の入った飲み物を飲ませ意識を失わせた後,現金,宝石類,時計など総額80万ルーブル以上を盗んだ容疑で30歳の女が逮捕された。この事件以外にも,余罪があるとみられており,犯行に及ぶ際には,出身地や年齢を偽り被害者に近づいていた。

      ●2月18日,21時30分,在ロシア米国大使館に侵入しようとした男が逮捕された。

      ●2月25日,14時45分頃,内務省に「不審者が在ロシア米国大使館の敷地へ侵入しようとしている。」との通報があり,現場に駆けつけた警察官により,26歳無職のモスクワ市民の男が拘束された。

      ●3月1日10時25分頃,モスクワ市南西部のプロフソユズナヤ通りで,タクシーの運転手と客がけんかとなり,運転手は客の胸部と太ももをナイフで刺して逃走した。5分後に,警察は逃走した運転手を拘束したが,オーストラリア国籍の男性被害者は,胸部と太ももをナイフで刺され,病院へ搬送される途中失血が原因で死亡した。

      ●3月16日,モスクワ市の鉄道駅シリカートナヤ駅のプラットホームにおいて,ウクライナ人の男性(37歳)が,カザフスタン人と間違われ,大勢のロシア人青年に暴行され死亡した。暴行した青年らは15歳から20歳であった。

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    9. 【その他参考となる事案】

      ●1月4日,新モスクワ地区において,違法薬物密売グループが摘発された。グループのメンバーは,北コーカサス出身の男2人,ウクライナ出身の男2人の4人であった。この摘発で,警察は違法薬物50包及び武器類(けん銃6丁,猟銃2丁)を押収した。

      ●1月9日日中,モスクワ市第12パルカバヤ通りにおいて,モスクワ市在住の男性(26歳)が所有する500万ルーブル相当の高級乗用車が盗まれた。

      ●1月10日,モスクワ市ボリシャヤ・ポリャンカ通りのアパートで,何者かがバルコニーのドアをこじ開け,2階にある46歳の女性の部屋へ侵入し,金庫の中から現金12万ドル,貴金属等を窃取し逃走した。被害総額は700万ルーブルであった。

      ●新年休暇中(1月11日まで),ロシア国内において飲酒運転による事故発生が250件近く確認された。この結果22人が死亡,340人以上が怪我を負ったと警察が発表した。

      ●1月14日,モスクワ市の北東部を管轄する交通警察の警察官3人が,交通違反をした市民に対して免許を剥奪すると脅し,賄賂5万ルーブルを要求する事案が発覚した。

      ●1月14日,モスクワ市交通警察はナンバープレートの掲示義務について運転手に注意喚起している。当地における天候を考慮して,運転の前にはウォッシャー液やワイパー,ライトの動作確認だけでなく,ナンバープレートが汚れて見えなくなっていないか確認するよう推奨されている。

      ●1月15日,モスクワ市中心部のマネージ広場において,野党指導者であるアレクセイ・ナヴァリヌィとその弟の支持者らによる無許可の集会が行われた。マネージ広場からそれほど離れていないカメルゲルスキー横町において,ナヴァリヌィの支持者グループと,コサックの衣装を着たグループによる衝突が発生したため,警察は地下鉄「革命広場」駅の方へ誘導し,解散を促した。内務省の発表によると,この無許可の集会に参加したのは総勢約500人であり,約10人が拘束された。

      ●1月28日,会社員の男性がモスクワ市ナロードナヤ通りからタクシーに乗ったところ,タクシー運転手からスタンガンによる攻撃を受けて,現金及び書類の入ったかばんを奪われた後,車外へ押し出された。本件の被害額は,約400万ルーブルであった。

      ●2月6日,サラトフ州出身の44歳の男が,モスクワ市内のビジネスセンターでオフィスを狙って少なくとも15件(被害総額2000万ルーブル)の窃盗を繰り返してた容疑で逮捕された。

      ●2月13日,ビジネスマンがモスクワ市ミーラ大通り181番地で30万ドルを両替するために両替所の係員に現金を渡し,15分待ってもルーブル現金を受け取ることができなかったことから,レジ係の部屋をみたところ誰もいなくなっていることに気づき警察へ通報した。被害総額は,30万ドルであった。

      ●2月22日,モスクワ市ペトロフカ通りの飲食店において,「ドネツク人民共和国」支持者と反対者による乱闘が発生し,反対者が罵声などを浴びせながら「ドネツク人民共和国」の旗を持っていた支持者の顔に向けて低致死性拳銃を発射した。この反対者は逮捕され,同拳銃は押収された。

      ●3月1日,射殺された野党指導者ボリス・ネムツォフ氏を偲ぶデモ行進が実施された。警察発表では2万1千人以上が,デモ行進の主催者発表では5万人以上が参加した。15時ころ,キタイゴロツキー横丁付近に集まった参加者が行進を開始し,17時ころ,マールイ・モスクバレツキー橋付近で解散した。この行進において50人以上が公共の秩序を乱した容疑で拘束された。

      ●3月21日19時00分頃,84歳の男性(年金受給者)が,モスクワ市レニンスキー大通りにある自宅において強盗の被害に遭った。被害者男性が散歩から帰宅して家のドアを開けた際,何者かが被害者に近づいてきて,スタンガンで脅したうえ金を要求したため,被害者がやむを得ず現金の保管場所を教えたところ,犯人は現金28万ルーブルを奪って逃走した。

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  4. テロ・爆弾事件発生状況

    (1)邦人被害はなし。

    (2)外国人被害はなし。

    (3)テロ・爆弾事件(未遂)発生事例

    ●1月3日未明,ダゲスタン共和国で,人気サッカーチームの2部チームの選手が射殺された。

    ●1月6日夜,ダゲスタン共和国の路上で,何者かが警察車両を銃撃し,警察官2人が死亡し,2人が負傷した。

    ●鉄道駅への爆弾の通報は,1月中旬から2月下旬にかけてクールスキー駅,レニングラーツキー駅,パベレツキー駅に予告が4件あったが,いずれも爆発物は発見されなかった。

    ●2月下旬から3月初旬にかけて複合商業施設への爆弾の通報が3件あったが,いずれも爆発物は発見されなかった。

    ●2月25日,モスクワ市オブラズツォヴ通りに所在する商業施設近くにおいて,テロ組織「イスラム国(IS)」の思想や行為を周知・正当化するインターネットサイトを運営し,ISIL戦闘員を名乗っていたタジキスタン人が拘束された。

    ●2月27日夜,ロシアのプーチン政権を批判する野党指導者ボリス・ネムツォフ氏が,モスクワ中心部で暗殺された。捜査当局によると,クレムリン(大統領府)近くの橋を散歩中,何者かに銃撃を受け,その場で死亡したとのこと。

    ●2月28日,チェチェン共和国内で,活動中の軍兵士が仕掛けられていた爆弾が爆破され,1人が死亡し,4人が負傷した。

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  6. 誘拐・脅迫事件発生状況

    ●1月1日19時頃,モスクワ市中心部にあるマネージ広場において,ウズベキスタン国籍の男(無職・29歳)が4歳の少女を連れ去ろうとして,警察に取り押さえられた。

    ●本年1月初め,モスクワ市内において,33才の中国人企業家が誘拐され,身代金250万米ドル(後に100万米ドルに引き下げられた)が要求された。モスクワ市及びモスクワ州における捜査の結果,本件容疑者として不法滞在中の35才から45才の中国人4人が逮捕された。さらにこれと同時に,中国の警察は,中国福建省福清市において,この犯罪組織の構成員3名を拘束している。

    ●2月6日夜,モスクワ市カポトニャ地区で,17歳の男子学生が自動車に無理矢理乗せられて連れ去られた。その後,被害者の同級生の携帯電話に現金100万ルーブルを要求する電話がかかってきたが,金の準備が不可能なことを訴えると解放された。翌7日,モスクワ市リュブリノ地区で犯人とみられる20歳と22歳のグルジア人の男らが逮捕された。

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  8. 日本企業の安全に関わる諸問題

     

    1. 日本企業に対するものではないが,時折,当館に対して領土問題に関する抗議活動が行われることがある。領土問題については,日系企業や団体,在留邦人,邦人旅行者であっても言動等に注意が必要である。
    2. 近年,ロシアでは外国人管理が厳格化されており,軽微な交通違反等であっても複数回違反した場合,入国禁止処分を受けることもあるので,法令違反には注意が必要である。

 

 

以上