安全情報

 

在留邦人の皆様へ

                           平成22年2月25日
                               在ロシア日本国大使館領事部

 

お知らせ(第10回「安全対策連絡協議会」開催報告について)

   2月18日(木)12時から13時30分まで、当館にて第10回「安全対策連絡協議会」を開催したので結果をご報告します。

 

● 出席者

茂谷貴彦ジャパンクラブ領事・総務部会長、池田正弘ジャパンクラブ事務局長、日本航空インターナショナル・モスクワ支店長(代理出席 糸山昭久マネージャー)、山田将光ツムラーレ総括支配人、種村博雄モスクワ日本センター所長、加藤茂高モスクワ日本人学校長、南博公使(邦人安全対策統括官)、横山章参事官(医務官)、大野郁彦参事官(領事部長)、山崎政一書記官(領事部担当官)、堂口剛志書記官(警備班長)、石村徳明書記官(領事部副担当官)

 

● 議題及び協議内容

  1. 冒頭(当館より)
    昨年3月に行われた第9回協議会からは約1年を経たが、この間、メキシコで新型インフルエンザが発生し、その後世界的な流行となったが、強毒性でなかったのが幸いし大きな混乱に至らずに済んだ。今回は最近の当地治安情勢及び新型インフルエンザ対策につき協議したい。

     

  2. テロ及び犯罪情報等(当館より)
    (1)テロ情勢
      昨年11月に、モスクワ発サンクトペテルブルク行き「ネフスキー・エクスプレス」急行がトヴェーリ州で脱線し、28人が死亡、100人以上が負傷した。この事案では、現場から爆発装置の残骸が発見されるなどしており、テロリストの犯行とされている。このようにテロ情勢は依然として予断を許さない状況にある。
      ロシア内務省の犯罪統計によれば、2009年(1月~11月)にテロ行為として登録された件数は13件で、2008年(1月~10月)の7件に比べ増加しているが、2007年(1月~11月)の46件に比べれば、低いレベルに止まっている。
    (2)治安情勢
      モスクワ市内務総局によると、2009年のモスクワにおける犯罪認知件数は、約21万2千件で前年比0.1%増加した(因みに東京都は約18万8千件)。市内において犯罪が前年に比し増加した地域は、地下鉄構内(+13.9%)、ゼレノグラード管区(モスクワ新興衛星都市)(+6.8%)、北東管区(+3.8%)となっている。逆に減少した地域は、南管区(-8.9%)、南東管区(-0.5%)である。邦人が比較的多く住む南西管区は、前年とほぼ変わっていない。
      2009年の犯罪の特徴としては、経済危機の影響で窃盗事件数、公共の場で行われる犯罪数が増加したことが挙げられる。密かに他人の財物を窃取する窃盗は約9万6千件(+3.2%)、公然と他人の財物を窃取する窃盗は約1万9千件(-7.0%)、強盗は3,730件(-19.8%)となっている。東京都と比較すると、窃盗事件数はモスクワ市11万4,490件に対し、東京都9万8,300件、強盗事件はモスクワ市3,730件に対し、東京都は610件でモスクワ市の治安は悪い状態と言える。また、公共の場所(建物内、地下鉄構内など)で行われる犯罪は、10万4,971件で前年比+5.1%、路上で発生した犯罪は3万1,050件で前年比-6.9%となってる。劇場、デパート、地下鉄構内などの公共の場所では注意が必要である。
      麻薬犯罪については、2009年モスクワ市において約1万3千件発生している。前年比+6.3%。ロシアではヘロインが一番多く、大麻が二番目となっている。現在ロシアでは薬物が重大な社会問題となっており、当局も検挙を進めているところである。市内における麻薬犯罪は、地下鉄構内(前年比+48%)、北西地区(同+30.2%)、西地区(同+27.7%)、南西地区(同+19%)と増加傾向にある。薬物常習者と思われる者には近付かないようお願いしたい。
      モスクワで発生する犯罪のうち、約半数がモスクワ以外の他の都市から来た者による犯行であるということである。そのうち、外国人による犯罪は約1万6千件で前年比7%増。犯罪者の内訳は、ウズベキスタン人、タジキスタン人、キルギスタン人等と旧ソ連構成国出身者による犯行が多くなっているのが特徴である。
      また、ロシアではスキンヘッドと呼ばれる集団による殺人、傷害事件等が多発しており、ソバ・センター(民族主義による犯罪を調査している人権団体)によると、全ロシアにおいて、2008年109人死亡、486人負傷、2009年70人死亡、333人負傷とのことである。ソバ・センターによると2009年は、2004年の統計を取り始めて以降、最も少ない数字とのことであるが、スキンヘッドによる活動は沈静化する傾向にあるものの、依然として事件は発生しており注意が必要である。因みにモスクワ市においては、2009年33人死亡、131人負傷している。昨年は内務省と連邦保安庁による共同作業により、33人のスキンヘッドが逮捕され、34件の犯行を自供、死者14人分が解決したとのことで、捜査当局もスキンヘッドの活動には注意を払っている。
    (3)交通情勢
      ロシア全土において、2009年は203,603件の交通事故が発生したが、前年比マイナス6.7%である。交通事故死亡者数は、26,084人(前年比12.9%減)、負傷者257,034人(前年比5.1%減)。死亡者数は日本に比べて約5倍。ロシア人の運転はかなり乱暴で割り込みや反対車線走行、急な車線変更等が日常的に行われており、運転の際には十分注意してもらいたい。
    (4)参加者からの質問及び当館回答
      (イ)内務省改革と言うことで、警察官の不祥事を取り締まるとの話題があるが、何か具体的に承知しているか。
        ―内務省では改革を進めており、不適格警官の処分を行っていると聞いている。報道によれば、昨年の警察官による法令違反は全ロシアで10万件あり、うち5,200件が刑法犯となっている。相次ぐ不祥事に対し、メドベージェフ大統領は昨年末、約2年間で警察官の数を2割(約18万4千人)減らす大統領令に署名するなど、内務省改革に取り組む考えを示しており、当館としても今後関心を持って注視していきたい。また、モスクワ市内務総局は、警察官によるたかり行為に遭遇した場合も含め、現場の警察官の対応に不審な点があれば、然るべく対応するので、現場から「02」に通報してもらいたいとしている。なお、最近、邦人が警察官のたかりに遭遇した事例があり、地域を担当する監察官組織に調査を依頼したところ、同組織の幹部自らが自身の権限として、そのたかり行為に係わった警察官を辞職させた旨の発言があった。実際のところは明かではないが、ロシア側の対応に変化が見られるようになったとの印象は受ける。
      (ロ)空港内の安全問題、管理体制については、定期的に空港管理事務所との会合の場で現状を確認することが可能。例えば空港から市内へ向かう場合のタクシー等でのトラブル事例等があれば通報し対処することとしたいがその様な事例はあるか。
        ―タクシーにまつわる具体的なトラブル事例は承知していないが、そもそも空港内のタクシーが正規のタクシーで、かつ信頼の置けるものかが分からないのが問題である。空港内と言うことであれば、従来よりシェレメチェボ空港内での不良警官のたかり問題が多数発生している。最近初めてドモジェドボ空港でも国内線エリア内において警官と思われる者による到着通知の不所持を理由にたかられた事例が起きている。
  3.  

  4. 邦人犯罪被害(当館より)
    (1)当館認知件数
      2009年に当館が認知した邦人犯罪被害件数は38件で、2008年の55件より減少したが、2008年は深刻な年であったので、件数が減少したからと言って油断するのは危険であり、依然10日に1件は事件が起きている計算なので、引き続き細心の注意を払ってもらいたい。特に強盗、暴行といった犯罪は夜間に起きているので、夜間の外出には注意いただきたい。
    (2)偽造紙幣
      ロシアにおける昨年の偽造紙幣の発見件数は08年に比し16%増で、この偽造紙幣の97%は1,000ルーブル紙幣、また、5,000ルーブルの偽造紙幣も10倍になった旨ロシア中央銀行が発表している。昨年、邦人が精巧な玩具紙幣を渡されたという事例があったが、特に夜間におけるレストラン、タクシー等暗い場所での会計の際は注意が必要である。
    (3)不良官憲
      不良官憲による邦人被害は2009年は11件(2008年9件)で引き続き発生している。警察官の不祥事については先程述べたとおり(2.(4)(イ))であるので、被害に遭遇した際は当館への通報等徹底してもらいたい。
    (4)公共交通における事件・事故
      ネフスキー・エクスプレスの爆破事件の際には、当館にてロシア鉄道が作成した乗客リストにより邦人氏名の有無を確認すると共に、ツムラーレ等大手旅行会社にも照会させていただき、事件発生後の早い段階から邦人が巻き込まれた可能性が低いことが把握できたが、万一、市内の地下鉄やバス等で事件・事故が発生した場合は、乗客の確認のしようがないので、邦人の安否確認には困難が予想される。万一巻き込まれた可能性があるような邦人がいることを認知した場合には、当館への情報提供をお願いしたい。
    (5)大規模災害等
      昨年12月5日未明にペルミ市で発生した150人を超える犠牲者を出したクラブ火災を受け、今月4日、メドベージェフ大統領が、不適合な建物に入居する娯楽施設をすべて閉鎖するよう非常事態相に要請する等、ロシア当局は社会施設に対する防火体制の監督をより厳しく行っているということであるが、同様の事件が今後起きないとは限らないことから、娯楽施設等への立ち入り時には避難経路を確認する等注意していただきたい。
    (6)到着通知の際の手数料の徴収について
      2月11日より改正露税法の施行に伴い、外国人の到着通知手続に際する手数料として、滞在1日あたり2ルーブル(上限200ルーブル)が徴収されるようになった。この新制度では、予め移住庁が指定する銀行口座に手数料を振り込んだうえ、その領収書を提示して到着通知を行うことになる。昨日の時点では、郵便局における到着通知の際には手数料は徴収されていないことを確認したが、法律で定められたので早晩、郵便局での到着通知の際でも手数料の徴収がされると思う。今後具体的にどのような方法で徴収されるか、また、全郵便局で同様の手続となるのか、当館としても今後情報収集して適宜邦人の皆様にも情報提供していきたいが、ジャパンクラブ始め邦人の皆様からも具体的な情報をいただければ有り難い。
  5. 新型インフルエンザ対策について(当館より)
    (1)2009年4月にメキシコより発生した新型インフルエンザ(H1N1)は、現在、177の国と地域で感染患者が確認されている。昨年、世界的なパンデミック(大流行)となり、日露両国においてもパンデミックの第1波が襲来したが、現時点では流行のピークを越えた模様である。
    (2)日本では昨年5月9日に国内初の感染患者を確認した。本格的流行は9月頃から始まりピークは11月終わり頃、本年1月22日の時点での累積推計患者数は1,923万人といわれている。
    (3)ロシアでは昨年5月22日、国内初の感染患者を確認した。本格的な流行は10月頃(日本より2~4週遅れ)に始まり、12月の始めにピークを迎えた。公式国内感染者数は30,319人、死亡者数24人であるが、11月の時点で累積推計患者数が600万人と政府が発表している。
    (4)新型インフルエンザの特徴は、ほぼ季節性インフルエンザと同様の症状(突然の38℃以上の発熱、せき・くしゃみなどの呼吸器症状、頭痛、関節痛など)であるが、下痢などの消化器症状が出てくることもある。潜伏期は1~7日、致死率は0.1~0.5%(治療法によってバラつき有り)。概ね抗インフルエンザ治療薬(タミフル・リレンザ)なしでも自然治癒が期待できる弱毒性である。
    (5)流行の第1波はほぼ過ぎ去ったが、第2波が本年春から夏にかけて来ると見られ、感染防止対策が必要である。一般予防策(マスク、手洗い、うがい、咳エチケット)や治療薬、生活用品の準備も引き続き必要であるが、パンデミックワクチンの接種が重要である。ロシア国産ワクチンも昨年11月より接種可能となっているが、品質、衛生面等から日本国内でのワクチン接種をお勧めする。パンデミックはまだ終わっていないので、引き続き注意してもらいたい。
    (6)邦人がよく利用する欧米系クリニック(SOSやEMCなど)では、インフルエンザ治療薬やインフルエンザ迅速診断キットが配備されている。ロシアの公立病院ではこれらの治療、検査は期待できない。
    (7)参加者からの質問及び当館回答
    (イ)次の流行が春以降とのことであるが、毎年その様な時期に流行するのか。
    ―第2波の流行は、新型インフルエンザの出始め、第1波の流行、人の移動等の周期から計算し春以降になると予想されている。今後は、流行を繰り返しながら、本来、冬季に発生している季節性インフルエンザに定着していくこととなると思われる。
    (ロ)第1波で罹患した人はパンデミックワクチンの接種は必要ないか。
    ―既に免疫が獲得されているので、今回のワクチン接種は必要ないと考えられる。
    (ハ)ワクチン接種の頻度とサイクルを教えてもらいたい。
    ―今次の新型インフルエンザワクチンのうち日本国内産ワクチンの場合は、13歳未満は2回接種する必要があるが、13歳以上は1回の接種で免疫効果があるとされている。
    今年に関しては、春以降にパンデミック第2波が想定されることを考えると、未罹患者はパンデミックワクチンを予防接種しておく事が効果的と考える。今は日本でも十分な量のワクチンが配備されているので、容易に接種可能と考える。
    今回の新型ウイルスの流行に伴い、従来型の季節性インフルエンザ(A香港型、Aソ連型)の発生が極めて低くなっている事実から、今後この新型ウィルスが季節性インフルエンザに定着すると予測される。そのようになれば、パンデミックワクチンは季節性インフルエンザワクチンに同梱されるようになり、毎年インフルエンザが流行する冬季の前に予防接種を行うようになると考えられる。
    (ニ)参加者からの報告(空港における検疫体制について)
    日本航空におけるモスクワ到着時の検疫体制は基本的に変更されておらず、航空機が到着した際は、検疫官が乗降口まできて、高熱等インフルエンザが疑われる乗客の有無を口頭で確認している。そのような乗客の有無を回答するが、特に問題がない場合は、検疫官が乗り込んで乗客1人1人に対してのチェックまでは行っていない。

以上