大使ご挨拶

令和6年1月16日



 新年あけましておめでとうございます。


 先月着任し、早一か月が過ぎようとしています。20年ぶりのモスクワ勤務の第一印象は、現下の西側に敵対的なマスコミの論調や政府の政策にもかかわらず、この国の西欧化が格段に進んだことです。街並みが欧州と変わらなくなったことだけでなく、売り子達の自然な微笑と愛想の良さには、かつてソ連時代を経験した身としては、大きな変容を感じるとともに、現下のロシア社会の保守的な傾向は、行き過ぎた西欧化への反動のようにも思えてきます。


 戦争下であるにもかかわらず、邦人コミュニティーがたくましくその活動を続けておられることに元気と勇気をいただいています。日本政府としては戦争の早期終結を訴えていきますし、本使も先頭に立ってロシア軍の撤退による平和の回復のために汗をかいてまいる所存です。他方、長期戦も覚悟しなければならない状況にあることも認めなくてはなりません。そのような状況の中で、隣国でもあるロシアとどう付き合っていったらよいのか、邦人の皆様は大変ご苦悩されているものと思います。


 保守傾向を強めるロシアとのあるべき関係は、今後のロシア側の対応やこの国と西側との関係がどのように変化していくかの問題と切り離して考えることはできませんし、ロシア自身もその回答を見出していないように思われます。そうした中で、際立った細い稜線を歩いていくような作業になりますが、皆様と一緒に考え、取り組んでいきたいと思います。そのために、ロシア側とも一定の交流が必要になると思います。2024年には、そのための文化交流や若者同士の草の根交流を再開したいと考えます。在ロシアの邦人の皆様を取り巻く状況が少しでも改善されるよう、大使館として努めてまいります。


 

駐ロシア日本国特命全権大使
武藤 顕



大使略歴