ウーリン・ボリショイ劇場総支配人への叙勲伝達式における上月大使祝辞

令和元年10月1日

ウーリン総支配人、
メディンスキー大臣、
そしてお集まりの皆様!


   本日は,ボリショイ劇場ウーリン総支配人の叙勲伝達式を開催することができ,心よりうれしく思います。
   今から60年以上前の1957年,ボリショイ劇場は初めて来日しました。以来,日本人にとってボリショイといえばバレエ・オペラの殿堂で,巡回のたびに衝撃を与え続けてきた,特別な存在です。60年を越すボリショイと日本の関係において,今回初めて総支配人に天皇陛下の勲章を授与することとなります。本日は,ロシアの芸術をこの上なく愛する者として,大使として勤務する3年9ヶ月間で最も喜ばしい日と言っていいでしょう。
   長年にわたって,ボリショイ劇場は日露文化交流において大変重要な役割を果たしてきました。本日はその中でも,ウーリンさんがボリショイ劇場の総支配人となられてから行われた,特に二つの大きな出来事について感謝を申し上げたいと思います。一つは「ロシアの季節」をきっかけとする日本公演について,二つ目は,ボリショイ劇場で行われた日露交流年の開会式です。


   まず,皆様ご存じのとおり,「ロシアの季節」は,20世紀初頭のディアギレフによるバレエ団の海外公演の伝統を復活させたものです。こちらにお越しのメディンスキー大臣のもとで始まり,今年で3回目を迎えました。記念すべき最初の国として選ばれたのが日本でした。オープニング公演としては、ここにいらっしゃるザハロヴァさん、ロジキンさんが出演したボリショイ劇場の「ジゼル」が選ばれました。この公演には安倍総理夫妻をはじめとする日本の政府要人や,ゴロジェツ副首相,メディンスキー大臣も参加しました。安倍総理はボリショイのファンになってしまったそうです。


   2つめは、ボリショイ劇場で2018年5月26日に行われた日露交流年の開会式です。
   かつて,この交流年準備にキーパーソンとして携わったシュビトコイさんは,交流年が成功するか否か,その半分が開会式にかかっている,とおっしゃっていました。そこで、開会式は,日本人なら誰もが知るボリショイ劇場でぜひ実施したい,と私がシュビトコイさんとともにウーリンさんに相談したところ,ウーリンさんは快くお引き受けくださったのです。
   開会式の内容は、武士が行う儀式「鏡開き」と、和太鼓公演「Drum TAO」でした。特に,和太鼓公演ではボリショイのソリストと和太鼓の共演が,観客に興奮と感激を生みました。これにはずみを得て、「ロシアにおける日本年」は実に600件を越す行事に160万人以上が参加し,日露交流史上最大の交流事業とすることができました。


   このように、ウーリン総支配人が日露文化交流に果たしてこられた役割に対し,心より感謝いたします。
   皆様のご健勝と,素晴らしいボリショイ劇場がこれからもますます発展し,日露文化交流にさらに大きく貢献していただくことを祈念して,私のお祝いの言葉といたします。