ショディエフ国際基金への外務大臣表彰伝達式における上月大使祝辞

令和元年9月24日

ショディエフ総裁,親愛なる皆様!


本日は,貴殿が総裁を務めるショディエフ国際基金の外務大臣表彰受賞式を開催することができ,心よりうれしく思います。ショディエフ国際基金は1996年に設立されて以来,ロシアをはじめとする様々な国において日本との間の相互理解や友好親善を深める活動に取り組んでこられました。


第一に,ショディエフ国際基金がロシア国内で行っている,大規模な文化行事に対する貢献を挙げたいと思います。

本年6月,安倍・プーチン両首脳臨席の下,大阪で日露交流年は終了しました。「ロシアにおける日本年」では600件以上の行事が開催されましたが,その中心となる行事でショディエフ総裁は大変重要な役割を果たしてくださいました。 9月にモスクワ,サンクトペテルブルクで11日間にわたって実現した松竹大歌舞伎近松座訪露公演は,1928年にソ連で歌舞伎の海外初公演が行われてから90周年という節目の年でもあり,連日満員の観客に感動を与え,大成功を収めました。 また,2011年からスポンサーとして8年連続で支えていただいているJ-FESTも,昨年と今年はゴーリキー公園において10万人以上の参加者を集めるロシア最大の日本祭りに成長しました。


第二に,久保田一竹氏の着物コレクションの保護・展示をご紹介します。染色の研究や貴重な着物展示によって,日本国内外で著名な久保田氏でしたが,2010年に資金不足で美術館が倒産し,貴重なコレクションがオークションにかけられ,ばらばらになってしまいそうになったまさにその時,ショディエフ国際基金が支援を申し出たのです。久保田一竹美術館は営業を続けることができ,ショディエフ国際基金がロシアのほか,フランスやオランダなど各国で行っている展示は大変な評判を生んでいます。ショディエフ国際基金による久保田一竹コレクションの保護は,日本の伝統を救ったばかりでなく,国を問わず世界中で喜ばれる美を守った点に大きな意味があると考えます。


第三に,研究及び学生に対する支援です。ショディエフ国際基金は,ショディエフ総裁の母校であるモスクワ国際関係大学に対する研究支援や,学生に対する奨学金支給をはじめとする学術面における活動をなさっています。1000を越す研究出版,毎年30名以上の特に優秀な学生に対する奨学金支給,欧米や日本への留学支援など,大変大きな実績をお持ちです。また,2016年にはロシア日本研究者協会の名誉会長にも就任され,研究を通じて人々の日本理解を促進する同協会の多くの活動がショディエフ国際基金によって支援されています。


第四に,映画制作を通じた,日本や日露交流に関する啓発活動です。歌舞伎やJ-FESTのような行事で生の日本を体験していただくことの重要性は論を待ちませんが,映像を通じ,ありのままの日本を知っていただくこともまた,比較できないほどの影響力を持っています。今日は,ここにおられるパノフ大使がシナリオを書かれ,ショディエフ国際基金が制作したドキュメンタリー映画第二弾「信頼への道―日本のロシア人」の一部を,皆様とともに拝見します。まさしく両国の信頼関係を築く活動を続けてこられたショディエフ総裁と,基金の活動を支えてこられたモナホヴァ所長の尽力に心より感謝し,皆様のご健勝と基金の益々のご発展を祈念して,私のお祝いの言葉とさせていただきます。