シャンツェフ前ニジェゴロド州知事への叙勲伝達式における上月大使祝辞
この度は,シャンツェフ前知事が天皇陛下より旭日中綬章を受けられたことに対して,本日お集まりの皆様とともに心よりお祝い申し上げます。
シャンツェフさんが最初に日本を訪問されたのは,約45年前,1974年のことと伺っております。以来,訪日歴6回を数える日本の良き友人であり,3年前には私の大使着任レセプションにも来ていただきました。
本日,日本政府としてシャンツェフさんに叙勲するにあたっては,3つの理由があります。
第一は,宮城県との地域間交流のイニシアティヴをとり,それを発展させてきたことです。特に,2007年には自ら同県を訪問し,「協力に関する覚書」に署名して相互交流をスタートさせました。2010年には宮城県の村井知事もニジェゴロドを答礼訪問しています。この交流は開始から既に10年を超え,昨年も経済や観光の分野で更なる交流の拡大が合意されるなど,いまも順調な進展を続けています。
先月で日本の東日本大震災から8年が経過しました。宮城県はこの地震と津波で甚大な被害を蒙りましたが,この困難な時期に,私たちはシャンツェフさんから温かい御支援と御助力をいただきました。
また,シェンツェフさんが手がけられた宮城県との交流は,初めてのヨーロッパ・ロシア地域との経済交流です。こうした先駆的な経験を踏まえて,日露の地域間では,昨今,地域間交流が活発に発展しています。
第二に,日本政府が2001年に設置したニジニ・ノヴゴロド日本センターに対する手厚い支援です。日本センターは,日本のノウハウの紹介やビジネスマッチングなどの活動を行っており,ロシア全土で7つ運営されています。その中で,大使館や総領事館のない唯一の地域がニジニ・ノヴゴロドです。ニジニ・ノヴゴロドの日本センターは,総領事館がない中で,日本企業の支援など,総領事館の機能の一部を果たしてきたと言っても過言ではありません。本日は,当時センター長としてシャンツェフさんのお世話になった浜野道博さんも,お祝いのために駆けつけて来られました。
第三の理由は,日本企業に対する支援です。ご存じのとおり,ニジェゴロド州はロシアの自動車産業の一大中心地です。シャンツェフさんの知事在任中に,大同メタル,旭硝子,ティラド,矢崎総業という日本の自動車関連企業4社が,相次いでニジェゴロド州に進出しました。シェンツェフさんのご支援もあり,今日,これらの日本企業がロシアの現地生産能力の向上に貢献していることを嬉しく思います。
また,シャンツェフさんは大のアイスホッケー好きだと伺っております。本日はディナモ関連のご友人も大勢来られていますが,私の息子も中学生時代をモスクワで過ごし,アイスホッケーを始めて,現在も愛好家として続けています。そのおかげで,私もアイスホッケーの魅力を理解するようになりました。日本でもアイスホッケーの人気は高まっていますので,今後はアイスホッケーを通じた日露協力の拡大にもシャンツェフさんの御協力をいただければ幸いです。
シャンツェフさんは日露の地域間交流のパイオニアと呼べる方です。昨年5月に始まった日露交流年は,今年6月に行われるG20で,安倍総理とプーチン大統領の参加を得て閉会式を迎えます。交流年では全部で544件のイベントが登録されており,ロシア国内で110万人以上が参加しました。その中では地方も重要な役割を果たしました。また,来年から地域交流年を実施するというアイデアも出ています。シャンツェフさんのはじめられた地域間交流が,来年以降,さらに大きな広がりを持っていくことを祈念して,私の挨拶といたします。
(了)