サディコヴァ・タタルスタン日本文化情報センター「さくら」所長,スヴィリドフ・モスクワ折り紙クラブ会長及びチャシヒナ・モスクワ子供折り紙センター所長への叙勲伝達式における上月大使祝辞
この度は,サディコヴァさん,スヴィリドフさん,チャシヒナさんが天皇陛下より勲章を受けられたことに対して,本日お集まりの皆様とともに心よりお祝い申し上げます。
皆様ご存知のとおり,日露両首脳の合意により定められ,日本とロシアの国民の相互理解を深めることを目的とした日露交流年は,昨年5月26日のボリショイ劇場における開会式を経て成功裏に行われています。この相互交流年の下では,政治・経済のみならず,学術・文化・スポーツ等の幅広い分野において,様々な二国間行事が開催されています。日露交流年のスローガンは「あなたの知らない日本があります」「あなたの知らないロシアがあります」と謳われていますが,中でも文化交流は,相手の国民を草の根レベルでよりよく理解するために最も重要な分野の一つです。
さて,本日勲章を受章されたお三方は,当地における日露文化交流を長年に亘って草の根レベルで推進しており,いわば日露交流年の「功労者」とも言える存在です。ここで改めて,その功績について紹介させていただきます。
まず,タタルスタン共和国において過去20年以上に亘り一貫して日本文化及び日本語教育の普及活動に取り組んでおられるサディコヴァさんです。サディコヴァさんは,カザン国立大学の物理学科の助教授として教鞭を執られる傍ら,タタルスタン日本文化情報センター「さくら」の所長として,我が国の伝統からサブカルチャーにいたる多様な日本文化を紹介してきました。特に,毎年春に実施される現代文化フェスティバル「フェニックス」は,カザン市の良き伝統になっています。また,2018年秋,「ロシアにおける日本年」の枠内でタタルスタン共和国との協力の下で行われた「カザンにおける日本フェスティバル」は,日本とタタルスタン共和国との緊密な繋がりを内外にアピールする絶好の機会となりましたが,この成功裏の実施に大きく貢献したのが,他でもない,サディコヴァさんでした。
続いて,モスクワにおいて長年に亘り日本の文化を象徴する芸術の一つである折り紙の普及・発展に携わられているお二人の活動を紹介したいと思います。
スヴィリドフさんは,1988年にソ連で初めてとなる折り紙専門機関「全ソ連折り紙センター」を創設,以降,モスクワ市で毎年開催の「日本の秋」をはじめとし,各地で展示会・ワークショップを開催されています。また,スヴィリドフさんは,ロシア語で書かれた初めての折り紙教本を出版されました。この折り紙教本が世に出たことにより,折り紙のワークショップにこれまで参加したことのない人は勿論のこと,ロシア語圏のあらゆる人々が日本の折り紙文化に直接触れて楽しむ環境が生み出され,折り紙文化のロシア国内・CIS地域での普及が一層進むことになりました。
チャシヒナさんは,我が大使館の広報文化センターの折り紙講師として長年勤務,その後,国際交流基金のモスクワ日本文化センターで講師としての活動を継続されています。さらに1991年からはモスクワ子供折り紙センターの代表も務められ,モスクワにおけるワークショップのみならず,地方における出張教室なども通じ,主に子供に対する折り紙の普及活動に尽力されています。また,チャシヒナさんは,視覚障害者に対する折り紙指導も積極的に行っており,盲学校生徒による折り紙展覧会を実施するなど,視覚に頼らずとも楽しむことができる芸術としての折り紙の潜在性を当地に広く紹介している点も特筆すべきでしょう。
スヴィリドフさんやチャシヒナさんが30年以上に亘り取り組まれてきたのは,継続性・忍耐力の必要とされる分野であり,折り紙はその代表格です。お二人は講座を通じて徐々に若い世代の愛好家を増やしてきました。その情熱,ご尽力は高く評価されるべきでしょう。
「ロシアにおける日本年」は本年6月まで継続しますが,この交流年を通じて,草の根レベルから日露関係を新たな段階に引き上げることは極めて重要であり,大使館としても,首都モスクワ及び地方において活発な日本文化発信を行っている皆様と今後より一層緊密に連携したいと思っています。
最後になりましたが,これまでの人生を日露交流の発展と相互理解の深化に捧げてくださったお三方の功績に心からの敬意と祝意を表するとともに,皆様の今後のご健康とご活躍を心より祈念いたします。
(了)