モスクワ安全対策情報(2018年7月)

1 治安・社会情勢
(1)一般的治安情勢
 ロシア内務省の発表によれば,2018年1月~6月のロシア連邦内の犯罪登録件数は全体で993,000件(-3.6%)となっている。
 同時期においてロシア国内で認知された「テロ行為」は20件(+53.8%)であるほか,テロに準じた犯罪を含む「テロの性格を有する犯罪」は968件(-14.0%),「過激主義による犯罪」は762件(-10.1%)となっている。

※括弧内は前年同時期比

(2)政治的安定度
 5月には政治活動家や政治組織によりモスクワ各所でデモ集会が行われたが,その後は大規模なデモ等は発生していない。

(3)反政府勢力の動き
 かつて多数のテロ活動を行っていた反政府武装勢力「コーカサス首長国」は指導者がロシア治安当局に相次いで殺害され,その活動は減退していると見られている。
 一方で,ISILに忠誠を誓った反政府武装勢力,シリアやイラクで戦闘に参加し帰還した者,ISILに影響された者によるテロの脅威は高まっている。

(4)対日感情
 ロシア国民の対日感情は一般的には良好であるが,北方領土問題などで民族主義者や各種団体が当館に対する抗議を実施しており,今後,同様の抗議活動が当館や日本関連団体・企業等に対して行われる懸念もあり,警戒が必要である。

2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)ロシア連邦内で発生している犯罪の傾向は以下の通り
 ア 全犯罪の登録件数約993,000件のうち92%が摘発された。
 イ 登録された犯罪のうち約半数が窃盗,詐欺,かっぱらい,強盗となっている。
 ウ 侵入窃盗は昨年同時期に比べ16.5%減少した。
(2)被害例は次のとおり(FIFAワールドカップ・ロシア大会が6月14日から7月15日に開催されたため,邦人被害例は多かった。)

【邦人一般犯罪被害】
●6月13日,モスクワ市ベラルースカヤ駅にて日本人の鞄から財布等が盗まれた。
●6月19日,モスクワ市内にあるサッカーワールドカップのファンゾーンにおいて,日本人女性がリュックサックの中に入れていたノートパソコンやアイフォン等が盗まれた。
●6月20日,モスクワ市ネフスキー通り付近のバス車内にて複数人に囲まれ財布等がスリ被害にあった。
●6月24日、エカテリンブルク市内繁華街のバーでサッカーを観戦中に財布が盗まれた。
●6月24日、エカテリンブルク市内の飲食店でテーブルに置いていた鞄を盗まれた。
●6月24日、エカテリンブルクのスタジアム内の飲食店にてWi-Fi、デジタルカメラ、その他を入れていたビニールバックを盗まれた。
●6月25日、エカテリンブルク市内の路上で知人と話していたところ、財布やパスポート等が入った鞄を盗まれていた。
【外国人一般犯罪被害】
●5月9日午後5時頃,非登録政党「もう一つのロシア」の活動家4人がモスクワ市チャプリギナ通りに所在する在莫ラトビア大使館前において,発煙弾2発及び発煙筒2本を正門玄関に投擲の上,壁にスプレーで書き込みを試みた。
●6月13日,モスクワ市クリマシュキナ通りに所在するポーランド大使館に対して何者かが正体不明の粉末が入った封筒2通を送りつけた。警察の捜査では,化学汚染,有毒物質,放射線について測定したが,全て陰性であった。
●6月13日,モスクワ市ピャトニツカヤ通りにおいて,35歳の中国人男性が2人組の男に現金を盗まれた。男らは警察官を装い,男性に身分証の提示を求めてパスポートと財布をチェックした後,タクシーで立ち去った。その後被害者は財布の現金がないことに気がついた。被害額は約20万ルーブル。
●6月15日,サッカーワールドカップを訪れていたコロンビア人歌手MALUMAが窃盗の被害に遭った。宿泊していたフォーシーズンズホテルの客室に何者かが合い鍵を使って侵入し,高級ブランドの装飾品,腕時計,バッグ等が盗まれた。被害額は5千万ルーブル以上と見られる。
●6月17日,モスクワ市ルジニキスタジアム周辺において,ペルー人の男がメキシコ人サポーターのポケットから1,960ユーロ相当のワールドカップ観戦チケット3枚を盗んだ。
●6月18日,警察はブラジル国籍の被害者から1,400ドルを盗んだ容疑で外国籍の男を逮捕した。男は知人と共謀して警察官を装い,身分証の確認と称して被害者にパスポートの提示を要求し,パスポートにはさめられていた現金を盗んだ。
●6月18日,オーストラリア人が赤の広場でドローンを打ち上げ,空域利用規則違反により身柄を拘束された。ほかにもアルゼンチン人,ペルー人,イスラエル人が同様の容疑で身柄を拘束されている。
●6月21日,モスクワ市スタロコニュシェンニ通りに所在する在莫オーストリア大使館に対して何者かが正体不明の粉末が入った封筒2通を送りつけた。
●6月28日,モスクワ市内のカフェにおいて,中国人旅行客が,現金13万ルーブル入りのバッグを席に置いたまま離れたところ,何者かにバッグを盗まれた。
【その他】
●4月1日,モスクワ市第3ラジアトルスカヤ通りにあるアパートにおいて,居住者の男が酒に酔った状態で窓から庭に向かって散弾銃を4発発砲した。けが人はなかった。警察は,拳銃やスタンガン等多数押収した上,31歳の男を逮捕した。
●4月2日,モスクワ市当局は,19歳の男子大学生を15歳の少女に対する脅迫の罪で逮捕した。男は,少女からわいせつ画像を送付するのを断られたことから,少女のわいせつな画像を流すと脅し2,000ルーブルを要求した。
●4月3日,モスクワ市シュミトフスキー通りにおいて,男が,路上に駐車していたキャデラックの後部ガラスを叩き割って侵入し,車内に置いてあった現金約75万ルーブルを奪った。ガラスの破裂音を聞きつけた警察官が現場に急行し,31歳の外国人の男を犯行現場付近で逮捕した。
●4月4日,モスクワ市ペレヴォフスカヤ通りに所在する住宅において,インターネット上でスマートフォンの販売広告を見た男性が,販売主が指定した住所の玄関に近づいたところ,見知らぬ2人組の男がやってきて被害者男性の顔面にスプレーを吹き付けた上,スマートフォンを奪い取った。警察は,近隣国出身の22歳及び23歳の男を逮捕した。
●4月5日,モスクワ市ソコリニチェフスカヤ通りに所在する金融機関のオフィスにおいて,迷彩服とマスクを身につけたグループが押し入り,自動小銃状の物で従業員を脅迫した上,現金約550万ルーブルを奪い取った。警察は犯人5人を逮捕しており,このうち4人は前科を有していた。
●4月8日午後,モスクワ市ガリバリジ通りにおいて,住居の入り口に立っていた男が,通りがかった母子に突然銃を発砲した上,食料品店に逃げ込んだ子供を追いかけバットで殴りつけるなどして,重傷を負わせた。警察は,46歳の男を逮捕した。
●4月9日,モスクワ市プレスネンスキー・ヴァル通りにあるアパートおいて,見知らぬ3人組がインターネットで知り合った男性を殴った上,ナイフで脅して現金や銀行カード等総額約70万ルーブルを奪った。警察は,犯人のうち22歳のモスクワ市民と22歳の地方出身者を逮捕した。
●4月16日,モスクワ市ラボーチャヤ通りに所在する歯科医院に見知らぬ2人組の男が押し入り,ナイフ及びエアガンで従業員を脅して現金を奪った。警察は,近隣国出身の28歳及び30歳の男を逮捕した。
●4月18日,モスクワ市ヤルツェフスカヤ通りに所在するアパートの一室に見知らぬ2人組の男が押し入り,ナイフのような物で住人を脅迫した上,現金,携帯電話,腕時計等約50万ルーブル相当の貴重品を奪い取った。警察は,22歳及び41歳の外国人を逮捕した。
●4月19日,モスクワ市ボグダノフ通りにおいて,見知らぬ男が77歳の女性の手から財布を奪い去った。同女の悲鳴を聞きつけた近隣住民らが犯人を捕まえて警察に引き渡した。犯人は,近隣国から来た39歳の無職の男であった。
●4月20日,モスクワ市第2クラスノグヴァルジェイスカヤ通りにおいて,ベンチで休んでいた男性が見知らぬ2人組の男に暴行された上,バッグを奪い取られた。被害男性は多数の外傷を負い,病院に搬送された。警察は,34歳及び42歳の外国人の男を逮捕した。
●4月29日,モスクワ州ボロコラムスクにおいて,酒に酔った42歳の男が,食料品店の女性店員を猟銃で脅して酒を要求し,要求を断った店員の足を撃って負傷させた。
●4月30日,モスクワ市第4ノヴォクズミンスカヤ通りにあるアパート付近で,複数の刺し傷がある22歳の女性の遺体が発見された。警察は,強盗目的で女性を殺害した罪で15歳の少年を逮捕した。
●5月4日夜,モスクワ市サヴィツキー元帥通りに駐車していたバス19台が何者かによって放火された。放火によるけが人はいなかった。
●5月8日,モスクワ州ラメンスコエ区クラトボォにおいて,2人の男が互いに銃を撃ち合う争いになり,撃たれた26歳の男が死亡した。
●5月13日夜,モスクワ市アドミラル・コロニロフ通りにおいて,運転手が車両を駐車していたところ,覆面姿の4人組の男が乗った車が進路をふさぎ,ガラスを割って被害者の車に侵入し,拳銃のようなもので脅迫した上,約85万ルーブルが入ったバッグを奪い取った。
●5月30日深夜,モスクワ市ポクロフカ通りの商店に男が侵入し,ATMを破壊して現金570万ルーブルを盗んだ。
●6月7日,モスクワ環状道路47km地点において,ドライバー同士が小競り合いから銃の撃ち合いとなり,手や頭にけがを負った。
●6月8日,モスクワ市第4オクチャブリスキー横丁の住宅街において,42歳の男が11歳の女児をナイフで切りつけた。女児は傷が肝臓や肺に達する重傷を負った。男は女児と面識がなかった。

3 テロ・爆弾事件発生状況
(1)4月24日,モスクワ市オリンピック通りに所在する複合スポーツ施設「オリンピック」に対して匿名の爆破予告があり,同施設内にいた1,500人以上が避難した。通報後,当局による点検が行われたが,爆発物は発見されなかった。
(2)テロ・爆弾事件(未遂)発生事例
●4月3日,モスクワ地区裁判所はモスクワ市内において,「イスラム国」へ活動資金を送金していたモスクワ市ゼレノグラード区出身の2人組の男を拘留した。男らは,ロシア連邦で禁止された国際テロ組織「イスラム国」の口座に共謀して継続的にお金を振り込んでいた。
●4月27日,モスクワ市内でのテロ行為を計画していた国際テロ組織「イスラム国」の構成員4人が連邦保安庁によって拘束された。テロの容疑者たちは,ヤマロ・ネネツ自治管区ノーヴィ・ウレンゴイ市の出身であった。同市でも連邦保安庁による特殊作戦が行われ,さらに20人の身柄が拘束された。

4 誘拐・脅迫事件発生状況
(1)邦人被害なし
(2)その他
  特になし

5 日本企業の安全に関わる諸問題
(1)日本企業に対するものではないが,当館に対して領土問題に関する抗議活動が散発した。領土問題については,日系企業や団体,在留邦人,邦人旅行者であっても言動等に注意が必要である。
(2)近年,ロシアでは外国人管理が厳格化されており,軽微な交通違反等であっても複数回違反した場合,入国禁止処分を受けることもあるので,法令違反には注意が必要である。また,不法滞在の処罰も厳格化しており,うっかり気づかず数日間査証が切れていたり,滞在登録を忘れていたりする場合にも,違法行為として裁判となる可能性があるので,日頃から注意しておく必要がある。また,最近,夜間に地下鉄駅,主要幹線道路等で警察から旅券の提示を求められる場合があり,所持していないと警察署に連行されるため,旅券の携行を推奨する。