2009年12月24日




岡田外務大臣のインターファックス通信インタビュー
(平成21年12月24日)

 

   ―― 岡田大臣は、来るモスクワ訪問から如何なる結果を期待しているか。訪問中、何らかの協定に署名する意向か。

 

     本年9月、鳩山総理は総理就任直後にメドヴェージェフ大統領との電話会談を行い、その後、間を置かずに、国連総会の場で、初めての日露首脳会談を行いました。その会談で、両首脳はアジア太平洋地域において新たな日露関係を切り拓くためのお互いの意思を確認しました。また、鳩山総理は、10月、国会において、ロシアをアジア太平洋地域におけるパートナーと明確に位置付けた上で、協力関係を強化していく方針を明らかにしました。

     このように鳩山政権下で日露関係は好スタートを切り、今後、アジア太平洋地域という舞台で、我々の関係を飛躍的に発展させる可能性が生まれています。大きな潜在力を有するこの地域への関心をロシアが深めていることを、日本は大いに歓迎します。日露協力を通じてロシアの極東・東シベリア地域のアジア太平洋地域への統合が進むことは、日露両国、更には、地域全体の利益となることは明らかです。

 

     もちろん、我々の関係を飛躍的に発展させるためには、日露間の最大の懸案である北方四島の帰属の問題を最終的に解決して平和条約を締結し、日露関係を完全に正常化する必要があります。アジア太平洋地域のパートナーと言う以上、国境が画定せず、平和条約が存在しないという現状は、極めて不自然です。日露関係は200年足らずの若い関係であり、この問題の解決は、両国民の利益のために両国の政治指導部が負う義務です。
     だからこそ、鳩山総理は、政治と経済を車の両輪として進めつつ、この問題を最終的に解決して平和条約を締結すべく精力的に取り組んでいく方針を表明しているわけです。

 

     私の今次ロシア訪問も、この方針に基づく精力的な取組の一環と位置付けることができます。今次訪問において、協定への署名といった儀式は予定されていません。その分、アジア太平洋地域における新たな日露関係の構築という大きな絵姿を念頭に、ロシア側の同僚たちと率直な議論をしたいと考えています。

 

―― 最近、ロシアによる「南クリル」の占拠に関する日本の声明の後にモスクワと東京の関係は再び先鋭化した。このような背景の下、領土問題の解決の見通しはどのようなものか。この問題に関するいかなる妥協が可能か、また双方ともいかなる譲歩もする気がないように見える中で、そもそも妥協は可能なのか。

 

     北方四島をめぐる日露両国の法的立場は異なります。まさに、それが理由で両国間で領土問題に関する交渉が行われているのです。

 

     この問題の解決は容易でないことは事実ですが、両国の首脳間にはこの問題を我々の世代で解決するとの意向が確認されています。この問題が発生して既に60年以上が経過しており、これ以上、どれだけ時間が必要というのでしょう。日本国民は、いつまでもこの問題を先送りしようとするロシア側の姿勢にこそ不信感を抱いているのです。この問題が先送りされる限り、日本国民がロシアに対して抱くイメージも変わらず、「パートナー関係」は言葉の上のものにとどまるでしょう。

 

     幸いなことに、鳩山総理とメドヴェージェフ大統領の間では、2度の首脳会談を通じて、個人的な信頼関係が構築されています。そして、私は、メドヴェージェフ大統領が鳩山総理に対し、「領土問題を含め日露関係に新たな道筋をつけるように努力したい」、「鳩山政権との間で領土問題をぜひ前進させたいと心から思っている」と述べたことを重く受け止めています。

 

     私としては、首脳間の対話を補佐すべく、具体的な解決策について、静かな雰囲気の下で、ラヴロフ大臣と議論したいと思います。その際には、メドヴェージェフ大統領が述べているとおり、冷戦的な思考を脱却した、プラグマティックな対応をラヴロフ外相より期待しています。

 

―― 世界危機は、露日の経済協力にどの程度影響を与えたか。日本企業のロシアからの撤退は見られないか。近い将来、大型契約の署名を期待できるか。

 

     世界的な金融経済危機は、日露経済関係にも大きな影響を与えました。2008年、日露間の貿易高は約300億ドルに達し、それまでの5年間で5倍に拡大しましたが、2009年の貿易高は、現在までのところ、昨年の約4割にとどまっています。

 

     一方、危機勃発後も日本企業によるロシア進出が続いています。本年5月には日産のサンクトペテルブルグ工場が操業を開始し、コマツや横浜ゴムなどの企業もロシアで工場を建設中です。こうした日本企業の動きは、経済分野での日露協力の潜在力の高さを物語っています。

 

     アジア太平洋地域においても、日露両国の協力には大きな可能性があります。ロシアは、ダイナミックに成長するこの地域との結びつきを深めるべく、この地域との経済的な統合に関心を有していると承知します。日本企業の技術によりロシアで初めてとなるLNG生産が開始されたサハリンⅡプロジェクトは、アジア太平洋地域における日露間の互恵的協力の象徴です。本年5月に訪日したプーチン首相も、エネルギー、運輸、2012年ウラジオストクAPECの関連など、極東・東シベリア地域において日本との協力を期待する多くの分野及び具体的な案件に言及しました。

 

     さらに、今年のメドヴェージェフ大統領の教書演説では、経済の近代化がロシアの最重要課題とされ、エネルギー効率の向上など、主要な経済の方向性が示されたことにも留意しています。日本は、こうした分野でも高い技術を持っており、イノベーションによる経済発展を目指すロシアと協力が可能です。

 

     鳩山総理は、メドヴェージェフ大統領との会談の中で、政治と経済を「車の両輪」のように進めたいと述べました。日本は、ロシアとの経済面での協力を進める用意があります。同時に、未解決の問題を含む政治面での協力も進めることができれば、アジア太平洋地域におけるパートナーとして、新たな日露関係を切り拓くことになると確信しています。

 

     今回の訪露では、フリステンコ産業貿易大臣との間で、貿易経済日露政府間委員会の共同議長間会合も行う予定です。上述のような観点から、フリステンコ大臣との間で率直な議論を行えることを楽しみにしています。

 

―― 最近、北朝鮮は六者会合への復帰の可能性を発表した。岡田大臣の意見では、六者のプロセスはいつ再開するか。そのためにはどのような条件が不可欠か。

 

     メドヴェージェフ大統領が述べているとおり、日露関係は、「アジア太平洋地域の安定と安全のために重要」な役割を果たさなければなりません。特に、北朝鮮による核・弾道ミサイル開発は、この地域のみならず、国際社会の平和と安定への重大な脅威であり、容認できません。累次の国連安保理決議や六者会合共同声明にあるとおり、北朝鮮による検証可能かつ不可逆的な核放棄を早期に実現することが重要です。

 

     北朝鮮をめぐる諸問題の包括的解決に向け、六者会合が最も現実的な枠組みです。六者会合再開の時期を予断することはできませんが、ミロノフ連邦院議長の訪朝やボズワース米特別代表の訪朝をはじめとする関係国による外交努力も踏まえ、六者会合の早期再開に向けて引き続き、忍耐強く取り組む必要があります。

 

     その観点からは、北朝鮮に対し、諸問題の解決に向けて具体的な行動をとることが自らの利益になることを理解させることが重要です。具体的には、すべての国連加盟国が安保理決議を着実に実施しつつ、引き続き、北朝鮮による六者会合への速やかな復帰と共同声明の完全実施へのコミットメント及び拉致問題を含めた北朝鮮の人権状況改善を含む、前向きかつ具体的な対応を求めることが重要です。

 

     今次ロシア訪問では、ラヴロフ外相との間で、以上の点につき日露を含む五者の結束の重要性を確認する他、アフガニスタン、イラン等、対テロ・不拡散といったグローバルな問題についても意見交換したいと考えています。