大使のインタビュー等

 

(ロシア語記事からの仮訳)

リア・ノーヴォスチ通信による河野大使インタビュー

 

日本大使:ロシアとの間で『クリル』の問題を解決することは、
東京は可能と考えている(2009年7月27日)

 

日本は領土問題の解決は可能であると考えているが、その実現方法をまだ見出していない。河野雅治駐ロシア日本大使がリア・ノーヴォスチ通信社のインタビューに対し答えた。同大使は、先日日本の国会で採択された「南クリル」に関する法改正についても説明した。

 

【問】最近、ロシアの世論や政界では、日本による「南クリル」関係措置法改正案の成立が強い反響を呼んだ。貴使の考えでは、そのような反響の原因となったことが、ロシアでどの程度正しく理解されているとお考えか。

 

【答】もちろん、ロシアの中で、この問題をよく理解している方もいれば、自分なりの解釈を持っている方もいると思う。簡潔に2、3点に絞って、本使の考えをお伝えしたい。第一に、日露間には領土問題があり、未だ解決していない。このような中で今次改正法は採択された。我々は、北海道の根室等の北方領土隣接地域を振興する必要がある。また、四島との関連で言えば、交流を発展させる必要があり、改正法はこれも目的としている。重要なことは、隣接地域の振興はロシアとは関係のない日本の国内問題であるという点である。四島交流について申し上げれば、日露両政府は過去約20年に亘って共にこれを推し進めてきた。最も重要なことは、今次改正法は日露両国の考えと矛盾していないという点である。
この法律の前文には、北方四島が日本固有の領土であると書かれてある。もちろん、この点では日露は立場を異にするが、我が国は戦後一貫してこのような立場をとってきた。両国が立場を異にしているが故に、交渉しているのである。
いくつかのマスコミの報道を拝見すると、若干誤りがあるので、もう一点触れたい。それは、来るべき選挙をにらみ、日本の一部の政治グループがこの問題を政争に利用しているという見方である。与野党共に全会一致で今次改正法を支持しており、対立はなく、よって政争の道具とはなっていない。ロシアの方々に今次改正法を正しく理解していただけるよう、本使のこの問題に対する見方を簡潔に述べさせていただいた。

 

【問】今次改正法は政治的宣言という性格を有するだけなのか、それとも政府に一定の行動を義務付けているのか。

 

【答】もちろん効果はある。すでに申し上げたとおり、政府は隣接地域の振興に力を尽くさなければならない。政府は元四島住民を支援する必要がある。これは日本国内の問題である。国会で改正法は成立したが、(この法律にのっとって)政府がどのような立場を取るかはまた別の問題である。

 

【問】今次改正法に関連して、ロシアでは日本と「南クリル」とのビザなし交流中止を求める声が上がった。ビザなし交流が中止されれば、日本の方々にどのような影響を与えるか。

 

【答】日本人と「南クリル」住民とのビザなし交流は、領土問題解決のための信頼醸成のため、1991年に始まった。簡単に申し上げれば、これら交流が中止されれば、不安と苛立ちを招くことになるのではないか。例えば、島には元島民の方々の先祖の墓があるが、交流が途絶えれば、元島民の方々は墓参ができなくなる。日本側は、時々ロシア人の島民を治療のため受け入れているが、交流が途絶えればこれも不可能になる。我々は18年間、このようなお互いに有用な交流を続けてきたが、もし交流が中止されれば、悲しむべきこととなろう。しかしながら、日露両政府とも、今後ともこの交流を続けていく必要があるという点で完全に一致している。

 

【問】次に、平和条約交渉について伺いたい。貴使の考えでは、領土問題を解決し平和条約を締結することはそもそも可能なのか。日本は、このことに、実際どれほど関心があるのか。

 

【答】この問題に対する回答はいつも異なっている。話のニュアンスもここ2、3ヶ月で変わった。7月9日にイタリアでメドヴェージェフ大統領と麻生総理は会談し、かなり長時間にわたって交渉を行った。本使は同会談に同席した。交渉に参加した者の観点からお話したい。メドヴェージェフ大統領と麻生総理との交渉においては、この問題を解決しようという強い政治的な意思が確認された。したがって、領土問題を解決することは可能かという質問には、はい、可能ですとお答えしたい。どういう解決策があるのかという質問に対しては、今の段階では日本側とロシア側と双方を満足させる解決策は見出されていないと申し上げる。国際交渉、外交交渉を、霧の中を進むことに例えれば、前方に何があるのか見えない。霧の中にいるものの、両首脳の手にはランプが握られている。解決策は見出していないが、これを見つける努力を続けていく。
日本がこの問題の解決にどの程度関心があるかという点については、ひとつの世論調査のデータをお伝えしたい。右調査によれば、日本では少なくとも80%の国民がこの問題の内容を理解している。したがって、この問題は日本国民及び政府にとって、忘れられない問題なのだということを確信を持って申し上げることができる。

 

【問】ロシアとの領土問題についての交渉を継続するために、日本側としては、何をする用意があるか。

 

【答】ある意味これが最も主要で難しい質問である。80%以上の日本国民がこの問題に注目しているため、その日本国民が納得する解決策を探さなければならない。公平に申し上げれば、ロシアの大統領もロシア国民に対し同じような状況にある。今日のところは、知恵を出していく必要がある、今度お会いするときにこれに何かを付け加えることができれば幸いである、とだけ申し上げておく。

 

【問】貴使は、駐露日本大使として、どのような課題があると考えているか。

 

【答】これまでの質問はすべて領土問題に関係するものであった。我々に相互不信があることは承知している。この不信感を払拭し、信頼関係を構築したい。我々はまだ互いをよく理解していない。私の課題は、両国の相互理解を深めることである。ロシアは国土にして日本の45倍あるが、人口は日本とほぼ同じである。国民の間での交流の密度について申し上げれば、ロシアと日本の間の人的交流は中国と日本の交流の20分の1に過ぎない。両国の国民の交流の深化を通じて、相互理解は深まっていくと思う。
二つ目の活動の方向としては、経済分野における相互協力が挙げられる。この分野における関係は急速に発展してはいるものの、ポテンシャルは巨大である。日本のGDPはロシアの3倍である。ロシアは現在東との関係の発展に関心を強めており、日本はこれを歓迎している。両国には国民間交流及び経済協力の発展の大きなポテンシャルがある。我々は非常に近き隣人である。モスクワにいるときは、日本は遠い国のように思うだろうが、ウラジオストクに行けば、いかに我々が近くに位置しているかが分かるだろう。