「アガニョーク」誌による河野大使インタビュー
「既に筆は手にある」 今週、イタリアでG8サミットが行われる。
予定される首脳会談の中には、ロシアの大統領と日本の首相との会談も含まれる。しかし、そのための雰囲気は、困難な二国間問題に関する激しい声明のやり取りの後であり、良好なものとは言いがたい。「アガニョーク」誌は、河野雅治駐ロシア特命全権大使にこの状況についてのコメントを求めた。
(問)多くの専門家は、両国関係は再び行き詰ったと述べている。大使はこの評価に賛成するか。
(答)そのような評価には賛成できない。ここ半年、日露首脳間のコンタクトは強化され、そのような気運の高まりがあったから、これに反対する声が出てきているのだろう。しかし、両首脳がこの問題の話し合いをしようという強い意思をもっている事実が重要。我々は、首脳を信頼し、首脳同士でどういう話をするのか期待して待たなければならない。
(問)御存知のように、政治とは、可能性の芸術である。領土問題においては、ロシアと日本はこの芸術を披露することができないようであるが如何。
(答)芸術という例を使われたので、その例を続けることにしよう。画家は、一瞬にして、筆を一振りしたら絵を描けるわけではない。我々の首脳は、戦略的パートナーシップという名の両国関係の新しい絵を描くことを目指しているのだと思う。戦後60年以上が経過しており、その歴史に基づいたキャンバスに絵を描いていく必要があるが、両首脳は筆を手に持って絵を描こうとしているところである。どのような絵になるのか、期待を持って見守りたい。メドヴェージェフ大統領は、ロシアと日本の関係発展において、新たな、型にはまらないアプローチを使う必要性について述べた。5月に訪日したプーチン首相と麻生総理の間には、対話を静かな雰囲気の中で行う必要があるとの合意がある。麻生総理とメドヴェージェフ大統領の間の会談では、お互いに努力して、この新しい絵をどのように描くかということが議論されてきており、前進の可能性がある。
(問)戦略的パートナーシップとは如何なる意味か。
(答)3つの側面に触れたい。戦略的関係が構築されるためには第一に日露関係が総合的に強い関係になることが必要であり、第二にアジアとの統合を志しているロシアと、アジアで主導的地位を有する日本が隣国としてこの地域の発展のために協力すること、第三にグローバルな問題に責任を有する大国として協力していくことが必要である。このようなレベルの関係には、平和条約が必要である。特に強調したいのは、ある特定の地域で天然ガスを開発することが、戦略的パートナーシップではないということである。
(問)ロシアと日本の交流や相互理解におけるあらゆる困難はあるものの、両国は、地理的に近接する隣人であり、この状況は、すでに経済、貿易における緊密な関係を想定している。しかし、これら分野においても成果は大きくないが如何。
(答)質問の内容について、疑問が湧く。というのは、すべては、評価においてどのような基準点を採用するかによるからである。最近5年間に日露間の貿易額は5倍に伸びた。また、二国間の経済貿易関係において、新しい方向性が生まれている。例えば、最近のプーチン首相訪日時に、原子力の平和利用分野での協力に関する協定が締結され、天然資源の開発分野における合意などが達成された。もし、逆の見方をして、現状が小さいと評価するのであれば、潜在力が非常に大きいことを意味する。
(問)実務分野でのコンタクトの発展におけるブレーキは、何によって引き起こされていると考えるか。それは政治によるものか。
(答)ロシアと日本の近さについての話は様々な面で行われる可能性があるということから始めよう。地理的には、我々は隣国である。東京からモスクワまでは非常に遠く、大多数の日本人はロシアの空間の距離を想像することさえできない。そして、隣人とは何を意味するのか。隣人とは、お互いを良く知り、さらに個人的に知っている関係である。つまり、人的要因の役割が大きく、人々の間のコンタクト、相互訪問、そして知り合いであることが、原則的に重要である。この点に関する指標では、我々は、隣人と呼べるレベルには相当遠い。例えば、韓国、中国は日本にとっての隣国であり、年間500万人以上が行き来している。ロシアと日本の間は、15万人である。この相応しくない状況を改善することは、重要な課題である。両国関係における領土問題は、心理的ブレーキになっている。
(問)東京からワシントン、又は、ロサンゼルスでさえ、近いとは言えず、アメリカとの距離も小さくはないが、アメリカとは全く状況が異なるが如何。
(答)ロシアと比べれば、大きく異なる。毎年400万人以上の往来がある。自分には、米国に一度も行ったことがないという友人は一人もいないが、ロシアに一度でも来たことがあるという友人も一人もいない。確かに問題である。
(問)今次経済危機は、グローバリゼーション時代の崩壊、世界はもう従来のままではないということを考えさせた。各国はこの経済的困難からの脱出のための独自の処方箋を持っているが、日本の処方箋如何。
(答)輸出への依存を削減し、内需を拡大する必要がある。また、短期的な施策とは別に長期的な経済の展望を持たなければならない。日本にとってのその方向性は明らかである。アジア太平洋に対して日本をより開かれたものとし、また、「低炭素社会」を建設することである。このためには、ライフスタイルを変え、エネルギーのむだ使いを伴う消費行動から離れ、イノベーション、省エネ、エコロジーに重点を置くことである。日露は気候変動の分野で協力の余地が大きい。
(問)大使は、最近モスクワでの高いポストに就かれた。外交官にとってロシアの首都で生活するのは快適か。
(答)感情を刺激する街である。雰囲気そのものに、感情が満ちている。これは、ロシア人がオープンだからかもしれない。物価は、確かにとても高い。なぜ、ここでは水よりビールのほうが安いのか、ウィスキーが東京の3倍するのか理解しがたい。
(了)
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